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ただ帰りたい。アウラクレアが待つ家に。私の<家族>が待つ家に。みんなで

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私達は決して、<正義の味方>じゃない。

綺麗事を言いたい訳じゃない。戦争を回避したいのも、飢餓をなくしたいのも、奴隷制度がいずれなくなってくれたらと思うのも、全て私自身の個人的な<願望>に過ぎない。

だからクレフリータが決して褒められるようなことをしてないのも分かってて、彼女を応援してるんだ。

直接は手を下さなくても、結果として人を追い詰めることもあるのが分かってて、協力してるんだ。

王太后様のことも、そういうものの一つなんだろうな。

だけど陛下は言った。

「母を止めてくれて、ありがとうございました。あの人は、もう、自分で自分を止められないところにまで行ってしまっていたのです……

幼い頃の母は、花や小鳥が好きな心根の優しい少女だったそうです。それが、陰謀渦巻く世界で生きていく内に、己を守る為に他人を傷付け、貶めることもできるようになってしまった。

いえ、そうならざるを得なかったのでしょう。貴族の家でなく、凡庸な平民の娘として生まれていれば、また違った人生を送れていたのかも知れません。

……というのは、ただの、<ないものねだり>ですね」

と、美麗な相貌かおを寂し気に歪めて。

それが本心でなくても構わない。そういうこととして受け取っておく。それで問題ないから。

まったく……

この国には<復讐>の為に来たっていうのにさ。だから何もかも信じないでおこうとしてるのにさ。結局、ここもただ普通の人間達が暮らしてる国で、普通に誰かを好きになって、でもその想いが届かなかったりして、それで拗らせちゃったりする、<普通の人>が住んでるだけなんだっていうのを思い知らされるだけだな。

でも、来て良かったよ。でなけりゃ私は、何となくただ想像してるだけの<仇>を胸にして、自分の恨みを見て見ぬふりをして自分に言い聞かせて生きていくことになってただろうしさ。



こうして迎えた春。私は本格的にこの国の農業改革に乗り出した。

なんて、ちょっと大袈裟かな。だって音頭を取ってるのは陛下だから。私はあくまでオブザーバー的な立場だから。

何も必要ない。何も求めてない。結果だけを残して、私はこの秋にはここを去る。それまでの間に伝えられることを伝えて、できるだけのことをやって、戦争なんかで他国から奪わなくてもやっていけるってことを示して、後腐れなくいなくなるつもりだ。

地位も名誉も称賛も要らない。ただ帰りたい。アウラクレアが待つ家に。私の<家族>が待つ家に。みんなで。



なんて言ったらさ、<フラグ>ってやつだよね。その所為か知らないけど、結局、私達がファルトバウゼン王国へと帰還できたのは、それからさらに三年後のことなのだった。

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