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着ているものをすべて脱ぎ棄てて大声で叫びたくなる時もあります

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自分の父親が不審な死を遂げた、いや、それを<不審>と感じるのは私だけの感覚なのかもだけど、そういう屋敷によくいられるなと老婆心ながら思ってしまう。

でも、そういう形で王様が亡くなったりすることさえそんなに珍しくもない世界なら、別に気にする必要もないのかもね。

「……え?」

だけど厳しいチェックを経てようやく屋敷に入った私は、また自分の目を疑った。そこにいたのは、本当に庶民のそれと変わらない質素な服をまとって私達を出迎えてくれる陛下の姿だったから。

「驚いたかね? だがこれが私人としての私の姿なのだよ。大仰な恰好は窮屈で好きじゃないんだ」

ちょっと子供っぽささえある、どこか悪戯っぽく笑う陛下に、私は急に親近感を感じてしまってた。

ああ、でもでも、それ自体が私達を油断させる為の演出かもしれないし、そのまま真に受けるのは危険なのか。

そう、私達は、本来、それだけの世界に生きてるんだ。いくら<いい人>そうに見えても信じちゃいけないっていう世界にね。

私が暢気に構えてるように見えるからそんな感じはしないかもだけど。

ただ、一緒に来たクレフリータが、

「お気持ち、よく分かります。私も時々、着ているものをすべて脱ぎ棄てて大声で叫びたくなる時もあります」

だって。その一言に陛下は顔をほころばせて、

「分かってくれる者がいて嬉しいよ」

と、今度はホッとしたように微笑んだ。

「まあ、かけたまえ。見ての通り食事も質素なものだが、今は我が国も苦しいのでな」

そう言って陛下が手で示したテーブルの上には、明らかに雪瓜をメインにしたと思しき、まさに庶民が食べてるのと変わらない料理が並べられていた。

だけど私はむしろ嬉しかった。陛下がこうやって私の作った作物を振る舞ってくれるのが。

「私は自分の作った作物が好きですから、ありがたいです」

それが素直な気持ちだった。

そうして、私と、クレフリータと、ルイスベントと、バンクレンチとが席について、<晩餐会>が始まった。

と言っても、なにぶん、気取らない格好の陛下と庶民感満点の料理の数々だから、普段の食事と何にも変わらなかったけど。

でも、いいな。それがいい。

「今日は君らを私個人として労う為にこの席を設けさせてもらった。『大いに』と言うにはいささか質素な宴ではあるが、その分、気取らずに楽しんでもらえたら私も嬉しい」

陛下のそんな言葉が嘘じゃないと分かるくらい<普通>だった。

そして。軽くお酒も入って雰囲気が完全に和らいだ頃、陛下が語り始めたのだった。

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