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こいつはこういう奴だ。この程度じゃこいつの心を折ることはできん

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「こんなこと……パテスヘルアル卿でないとすると、何者の仕業でしょうか?」

タレスリレウトが悔しそうにこぶしを握り締めながら言った。だけど私は不思議と落ち着いてた。

「まあ、誰の仕業だろうと関係ないよ。私は私にできることをするだけ」

そう言って私は、呆然と自分が担当していた畑を見詰めていた農民に声をかけ、すきとそれを引く牛を用意してもらった。

「そんな…! こんなことをされて腹が立たないんですか!?」

と声を上げるタレスリレウトに、私は振り向いて微笑んでた。

「もちろん怒ってるよ? 農家の人が手塩にかけて育てた雪瓜にこんなことされて腹が立たないわけないでしょ。けどさ、だからって、がーがー喚いてても元には戻らないんだよ」

「そんな、それでいいんですか……!」

納得できない彼が抗議しようとするところに、私は続ける。

「それにさ、今回はたまたま人間の仕業だったけど、こういうのは農を営んでいたら結構頻繁に起こるものなんだよ。天災や日照りで作物が全滅するなんてことは、別に珍しいことじゃないんだ。でも、そんなことがあっても飢えないようにする為に私は動いてるんだよ。このくらいのことでおたおたしてちゃ始まらないの」

きっぱりと言い切った私を呆気に取られた顔で見る彼に、クレフリータも言う。

「分かったろう? こいつはこういう奴だ。この程度じゃこいつの心を折ることはできん。分かったらさっさと体を動かせ。四の五の言ってても何も変わらん」

すると彼女の傍に立ってた初老の男性も口を開いた。パテスヘルアル卿の屋敷にいた執事の男性だった。謹慎中で迂闊に出歩くことのできない卿に代わって事情を説明しに来たらしい。でも私がまったく卿を疑ってないのが分かって、拍子抜けしてる様子さえあった。

「我が主人に成り代わり、この度のことは本当に心よりお見舞い申し上げます。ノーラカリン侯の途方もない器に感服いたしました。つきましては、私どもも微力ながら皆様方に協力したいと存じ上げます」

深々と頭を下げてそう言う執事さんに、私は、

「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて、人手を集めていただけますか? なるべく早く畑を綺麗にしたいから」

そう言いながら私は、踏み荒らされた雪瓜を土に漉き込みつつ、畝を作り直していた。

さすがに今からじゃ作付けはできないけど、畑を荒れたままで放っておくと見る度に気が滅入るからね。それに、畑を荒らした人物に、『この程度じゃ私達は挫けない』っていうのをアピールすることにもなると思うんだ。

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