何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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むしろ『来るべきものが来た』としか思わなかった

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パテスヘルアル卿と話をしたことをきっかけに改めてモチベーションを得た私は、小雪がちらつくなかで雪瓜の生育状況を確かめてた。

「うん、順調だな」

ここは気候が私の持ってた雪瓜に合ってたのか、急激な発育で身が割れたりすることも少なく、本当に順調に育ってた。これなら数日中には、早いところだと収穫を始められる。

と思っていたのに。

「ノーラカリン侯! 大変です! 畑が……!」

朝、私達の仮住まいの屋敷に使者がやってきてタレスリレウトに何事かを伝えたと思ったら、彼がそう声を上げた。

「畑が、どうしたの…?」

ただならぬ様子に、私はピンときてしまった。そして私が察したことを、タレスリレウトの言葉が裏付ける。

「今日、収穫を予定していた畑が何者かに荒らされて、雪瓜が全滅だと…!」

「そう……やっぱり……」

私はショックというよりもむしろ『来るべきものが来た』としか思わなかった。実はこれまでにも、触れてはこなかったけど、こういうことは何度かあった。だけど今までのは規模も小さくて、基本的には農民同士の個人的な感情のもつれによる単独犯や少数の人間による小規模なものでしかなかったから、敢えて触れてこなかったんだ。

だけど今回のは、明らかにそれなりの人数を動員して一気にやったことだというのが、荒らされた畑を確認して分かってしまった。

「…これは、一見すると乱暴に無作為に踏み荒らしたように見えますが、それにしては足跡の向きが揃いすぎてます。まるで、畑の上を行軍でもしたかのように」

とは、ルイスベントの弁。基本的には農業・産業を取り仕切るグループに属してるとはいえ、貴族としてそれなりに軍務経験もある彼の言うことは、十分に信用に値すると思った。バンクレンチも、

「確かに、これは行軍の跡にも見えますね」

と同調する。

「パテスヘルアル卿の差し金でしょうか……?」

タレスリレウトが重苦しい感じで問い掛けてきた。だけど私はそれには首を横に振る。

「分からない……それにこのタイミングでこんなことしたら自分がまず疑われるってことくらいは分かるんじゃないかな。ましてやパテスヘルアル卿は謹慎中だよ? 陛下にバレたらいくら貴族でも責任を取らされる。場合によっては死罪だって有り得るんじゃないの? それでこんなことするかな。とは思うかな」

私がそう言った時、背後から、

「お前の言うとおりだ。パテスヘルアル卿は昨夜、私とずっと一緒にいた。フルムヘイセン卿もその場にいたから間違いない。このような指示を出す暇などなかった」

って。クレフリータだった。クレフリータが、初老の男性を一人伴って現れたんだ。

彼女は続ける。

「もちろん、既に発せられていた指示が今日になって実行された可能性はあるが、やはりタイミングとしては不自然だな。だからこれは、別口だと考えるのが自然だろう」

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