何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって？ そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが！！

私はそもそも、そういう形で目立つのは好きじゃないんだ

もう今さら詳しく説明するのも面倒臭いくらいに、私の＜仕事＞は上手くいってた。と言っても、何度も言うけど、それ自体が当然のことなんだ。

元々、国のトップに取り入った上でさらにクレフリータが完璧に根回しをしてくれることで、＜力を持った人間による茶々＞が殆ど入らない。そして、私のやってること自体が、＜上手に家庭菜園で美味しい野菜を作る＞程度の話の、規模を大きくしただけの単純なことだから。

細かい部分では、ごねたり私の言ってることをどうしても理解してくれない人もいたりして手を焼かされることはあっても、そういうのはどこの業種でもどんな仕事でもあることだと思う。それくらいのことでいちいち愚痴を言ってたら逆に疲れるだけだって気がしてる。

それに正直、いくら『過去に例を見ない大豊作』とか言ったって、地球で行われてる大規模農法に比べれば、品質も収穫量も本当にたかが知れてるレベルでしかないっていうのも事実なんだ。もっと突き詰めて効率化を図っていれば、私がこれまで上げてきた＜成果＞のさらに数倍の収穫量だって見込めるだろう。そうでないと、これから起こるであろう＜人口爆発＞に対処できない。

もし、この世界も、人口の推移が地球と似たようなものなら、現時点での世界人口は十億人を下回る程度だと思う。それが七十億とかになると考えれば、私が増やした程度の収穫量じゃ全く足りない筈なんだ。

でも今はまだそこまでは必要ない。本当に基礎的なこと、失敗が少なくて確実にそれなりの結果が得られればそれでいいんだから、失敗しないようにしてるだけなんだ。これで失敗してるようじゃ、農に係わる者としては恥ずかしいと思う。

それくらいの、今のこの世界じゃまだ気付かれてなかったけど現代の地球では常識とされてる＜失敗しない野菜作りのコツ＞を伝えてるだけでしかない。

今後、これを基にしてたくさんの人がさらに研究を進めることになると思う。それによってもっと進歩するんじゃないかな。その際、いろいろ失敗もあったりするかもしれないけど、それを、地味だけど着実な方法で確実に収穫を確保してる畑で補えば、致命的なダメージを負わなくて済むと思う。

＜先進的な研究＞と＜地道な努力＞の両方を同時に行っていけば、ね。

もちろんこの世界にだってその辺りのことをわきまえてる人はいる。作劇的には、愚かな人が勝手なことをしてあたふたしてるところを私が格好良く解決してみせた方が盛り上がるんだろうけど、私は自分が評価されたくてこんなことをしてるんじゃない。今はもてはやされてるかもしれなくても、正直、早々に裏方として歴史に埋もれてしまいたいとさえ思う。

私はそもそも、そういう形で目立つのは好きじゃないんだ。