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お前の本質は、もしかすると私以上に抜け目のない、喰えない奴なのかも知れん

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『想定済みってことだったんじゃないの?』

そう問い掛ける私に、クレフリータはまた苦笑いを浮かべた。

「確かにその通りだ。私達を亡き者にしようとする奴らを動かすことになる可能性も分かっていた。だが、それでも、実際に危険に曝したことについては申し訳ないと思うのだ」

「…リータは私のことを『変なところで肝が据わってる』とか言うけど、逆にリータは、変なところで『気にしい』だよね。そんなの、黙ってれば分からなかったのに」

「そう言うな。私はお前のことが好きなのだ。失いたくないというのは本心だ。そのお前を危険に曝したのだから、それについては詫びたいと思うのはおかしいか?」

「ううん。そう思ってくれてるのは嬉しいよ。私もリータのことが好き。だから私が苦手としてるところを任せたことであなたが失敗しても、それを責めたいと思わないんだ」

私の言葉に、彼女は少し黙ってから、

「……すまん…」

って呟くように言った。その姿が何だか見た目通りの小さい女の子に見えて、私は首を横に振ってた。

「いいよ。気にしないで」

すると彼女はちょっと身を乗り出すみたいにして、

「ならば、ベルトマクタに目にものみせてやろうか?」

なんて言い出して。

だけど私は、それに対しても首を横に振った。

「本当に気にしてないから、そんなことしなくていいよ。それにさ、元々、危険なことになるのも想定して彼に接触したんでしょ? それで実際に危険があったからって意趣返しって、なんか違う気がする」

「それはそうかもしれないが…」

「それにさ、彼はリータにとって利用価値のある人なんでしょ? だったらそんなことで潰しちゃったら惜しいじゃん。せっかくの人脈が台無しになるってことだよね。しかも、彼を始末したってどうせ他の誰かが彼の立場に収まるんだよね? その新しい人が役に立つ人がどうかも分からないしさ。

だったら、今回のことは<貸し>ってことにして、何かあった時に無理を聞いてもらうっていうのもありかもよ?」

と言う私をクレフリータは真っ直ぐ見詰めて、フッと困ったように笑った。

「まったくお前の言う通りだよ。奴の人脈は私にとっても捨てるには惜しいものだった。

カリン。やはりお前は、単なる<底抜けのお人よし>ではないな。お前の本質は、もしかすると私以上に抜け目のない、喰えない奴なのかも知れん。だがそれはこの世界で生きるにはむしろ望ましい資質だ。

私はきっと、お前のそういう『お人よしに見えて実はそうではない』ところに惹かれているのだ。ならばこれからも危険に曝すかもしれんが、付き合ってもらうぞ」

「望むところだよ。リータ」

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