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<上手くいってる部分>を見てきただけに過ぎないんだ

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これまでの私のしてきたことが、すごく都合よく進んだようには他人には見えたかもしれない。

だけどそれは、あくまでそうなるように、綺麗事だけを一方的に押し付けないようにしてきた結果でしかない。私個人の本当の気持ちとしては、『戦争なんかなくなって奴隷制度もなくなってみんなが幸せになれればいい』っていうものだけど、それについては、辛うじて、『戦争についてはなんとかかんとか回避できる道筋を付けられつつある』っていうだけでしかない。

この青年陛下が言うように、ムッフクボルド共和国内では、戦争に向けた動きが今もあるそうだ。それが危ういバランスで抑えられてるだけに過ぎない。そして私のしてることは、『目先の飢餓を回避することで現時点での戦争を起こす理由を潰す』というだけのことだ。戦争っていうのは、それ以外の理由でも起こる。国同士の意地の張り合いとか、メンツとかを理由にね。

そういうものまでは、今の私じゃ抑えられない。今まで上手くいってるように見えるのは、<上手くいってる部分>を見てきただけに過ぎないんだ。

実際、遠くの国では、今も戦争が起こってるそうだし、奴隷制度が無くなるような気運の気配すら見えてこない。

そういう意味じゃ、本当に一部分だけなんだ。上手くいってるのは。

でも、私の器から見れば現状だってできすぎなんだろう。それも分かってる。

しかも、たくさんの人に助けられてのことなんだ。特にクレフリータの働きがなかったら、ファルトバウゼン王国での成功すらなかったと思う。ルイスベントの人脈がなかったら、ブラドフォンセス王国での成功もなかった。

結局は、私一人の力なんかじゃない。それをこれからも忘れないようにしなくちゃ。

『人生は上手くいかない』

そんなの当たり前だって今は分かる。自分にできないことをやろうとして『上手くいかない』って嘆いても上手くいくはずがない。物事を上手くいかせる為には、本心では自分は望んでないことだってやらなくちゃいけない時だってあると思うんだ。

私もその為に、横柄で欲深くて平民のことなんて自分の道具にしか思ってないような権力者に頭を下げてその力になるようにしてきた。今だって、自分達を亡き者にしようとした国(領主は変わってるけど)の国益の為にまた土塗れになろうとしてる。

それは、決して私の本心からのことじゃない。でも、私が実現したいと思うことの為には必要な妥協だから、そうするんだ。

幸い、今のところは、あくまで戦争を回避する為であって、戦争に加担する形にはなってないし。

けれど今後、国力が上がったことで野心を拗らせる国が出てくる可能性だってある。

それについても覚悟しなくちゃいけないとは思ってるんだ。

そしてそういう国を抑えるのは私には無理で、私以外の誰かの役目だっていうのを受け止めなきゃいけないんだと思ってる。

だって私にできるのは、結局、土いじりだけだから。

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