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美女のようにも見える美麗な青年陛下は、まさに<今時の若者>だったんだろうな
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『先代は、非情に短絡的な人物でしたので』
完全に余所者でしかない私達の前でそんな言葉を口にするアルバミスト・ルェン・フォーサリス・メトラカリオス陛下に、私も戸惑わずにはいられなかった。もう何年もこの世界で暮らしてそれなりに馴染んできてたこともあって、私自身もそういうのが普通じゃないことくらいは分かっていたから。
だから何となく、今、私の目の前にいるこの人物が、現代日本で言う<今時の若者>的な感覚を持ってるんじゃないかなと察してしまった。
地球でも、紀元前の遺跡に『今時の若い者は』なんていう意味のことが書かれてたりするらしいから、実は何千年も昔から前の世代と新しい世代とのギャップというものはあったんだろうなっていうのが分かる気がする。
で、この、美女のようにも見える美麗な青年陛下は、まさに<今時の若者>だったんだろうな。
単に、領主の立場に就けるだけの身分にいたというだけで。
まあその点で言えばクレフリータも相当な<変わり者>であり、前の世代の人達から見れば<今時の若者>って感じだろうから、似たようなものか。
「なるほど陛下は革新的な方とお見受けします」
と、クレフリータは彼を評した。
でも、陛下は、
「私は自分を<革新的>だとは思っていません。ただ、時勢に合わせて合理的な対処をしたいだけですよ。
その点、先代は古い考えに縛られ古色蒼然とした古城のような人物でした。そのような人物にこの国は任せておけないと思ったのです」
って。
だけど私はこの時、少し背筋に冷たいものが奔るのを感じてしまった。柔らかく微笑んでるように見えて、言ってることはひどく冷淡でほの暗いものを含んでるように思えてしまったのかもしれない。
なにしろ、今の言い方だと、『自分が先代領主を謀殺した』って告白してるようなものだと思ったから。
なるほど。パッと見には優男でいい人そうにも見える笑顔もできるけど、やっぱり国のトップにも立とうという人間は、<良い人>なだけじゃ務まらないってことなんだろうね。
だけど、私は逆にそれで自分が落ち着くのを感じてた。ただの<良い人>が相手だと、かえってやりにくい気がしたから。<良い人>って、個人的に付き合う分にはありがたいことも多いんだけど、誰に対しても良い顔をしようとする一面もあって、話が進まないことがあるんだ。
特に、新しいことをしようとする時には、それによって一時的に不利益を被る人も出てくる可能性があって、<良い人>はそういう人達の顔色も窺ってしまう傾向があるから。
ヘルデカイラス公国でも、魔法使いを募った時にちょっとごたついたみたいにさ。あの時は、領主様がごねる魔法使い達を抑えてくれたから結果としてはスムーズにいけたからね。
完全に余所者でしかない私達の前でそんな言葉を口にするアルバミスト・ルェン・フォーサリス・メトラカリオス陛下に、私も戸惑わずにはいられなかった。もう何年もこの世界で暮らしてそれなりに馴染んできてたこともあって、私自身もそういうのが普通じゃないことくらいは分かっていたから。
だから何となく、今、私の目の前にいるこの人物が、現代日本で言う<今時の若者>的な感覚を持ってるんじゃないかなと察してしまった。
地球でも、紀元前の遺跡に『今時の若い者は』なんていう意味のことが書かれてたりするらしいから、実は何千年も昔から前の世代と新しい世代とのギャップというものはあったんだろうなっていうのが分かる気がする。
で、この、美女のようにも見える美麗な青年陛下は、まさに<今時の若者>だったんだろうな。
単に、領主の立場に就けるだけの身分にいたというだけで。
まあその点で言えばクレフリータも相当な<変わり者>であり、前の世代の人達から見れば<今時の若者>って感じだろうから、似たようなものか。
「なるほど陛下は革新的な方とお見受けします」
と、クレフリータは彼を評した。
でも、陛下は、
「私は自分を<革新的>だとは思っていません。ただ、時勢に合わせて合理的な対処をしたいだけですよ。
その点、先代は古い考えに縛られ古色蒼然とした古城のような人物でした。そのような人物にこの国は任せておけないと思ったのです」
って。
だけど私はこの時、少し背筋に冷たいものが奔るのを感じてしまった。柔らかく微笑んでるように見えて、言ってることはひどく冷淡でほの暗いものを含んでるように思えてしまったのかもしれない。
なにしろ、今の言い方だと、『自分が先代領主を謀殺した』って告白してるようなものだと思ったから。
なるほど。パッと見には優男でいい人そうにも見える笑顔もできるけど、やっぱり国のトップにも立とうという人間は、<良い人>なだけじゃ務まらないってことなんだろうね。
だけど、私は逆にそれで自分が落ち着くのを感じてた。ただの<良い人>が相手だと、かえってやりにくい気がしたから。<良い人>って、個人的に付き合う分にはありがたいことも多いんだけど、誰に対しても良い顔をしようとする一面もあって、話が進まないことがあるんだ。
特に、新しいことをしようとする時には、それによって一時的に不利益を被る人も出てくる可能性があって、<良い人>はそういう人達の顔色も窺ってしまう傾向があるから。
ヘルデカイラス公国でも、魔法使いを募った時にちょっとごたついたみたいにさ。あの時は、領主様がごねる魔法使い達を抑えてくれたから結果としてはスムーズにいけたからね。
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