何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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一つの国家として実は成立してない実態も窺えた気がする

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メトラカリオス公国に向けて移動していた私達は、途中、何度も畑を目にした。ただ、いくつかの小麦畑だったと思しき畑が放置されて雑草に覆いつくされている様子も見えた。

たぶん、<悪魔のパン>の呪いが過ぎ去るまでそのままにしておこうという発想なんだろう。ヘルデカイラス公国の隣の、同じムッフクボルド共和国を構成する小国なのに、ヘルデカイラス公国に私が伝えたやり方が、噂レベルですら伝わってないのを感じた。

もちろん、私がいた地球と違って情報の伝達速度はまるで比べ物にならないんだっていうのは分かってる。だけど、<噂>っていうのは思いもかけないくらいの速さで伝わるものだっていうのも事実だと思う。

と言うか、もしかすると噂は伝わってるんだけど、やっぱり計画生産が優先されて、敢えてそのままにされてるってことも有り得るのか。

でも、それだとすると今度は、国の上の方同士でのつながりも希薄なんだっていう証拠になってしまう気がした。自分達の国ばかりが大事で、<ムッフクボルド共和国>という一つの国家として実は成立してない実態も窺えた気もする。

私が伝えたことがちゃんと共有されれば早いんだけどなあ……

と、それを嘆いても始まらない。とにかく、ムッフクボルド共和国の現首長を務めるという、メトラカリオス公国に行って私の知識を伝えれば、少しはマシになってくれるかな。

なんてことを考えつつ道程をこなし、二週間をかけて私達はついにメトラカリオス公国へと足を踏み入れたのだった。

途中、何度も関所があって、やっぱり<一つの国>なんてのは表向きだけなんだなと感じたりもしたけどね。

それはさておき、今回は招待されてのことだから、そのまま王宮へと向かう。すると私達の前に、馬に乗った騎士らしい人達が現れた。

「ノーラカリン様とその御一考とお見受けします。私はメトラカリオス親衛隊のゼルムトライソと申します」

どうやら私達を出迎えに来たらしい。

「ご苦労様です。私がノーラカリン・ベルマスミスクです。陛下にお目通り願いたく参上しました」

「おお、やはり。お噂はかねがね窺っております。此度は我が国の窮状に力を貸していただけるとのことで、こちらのペテルソンエスが皆様のご案内兼お世話係として同行いたします」

と紹介されたのは……

「あなたは……」

少し意表を突かれてそう口にしてしまった私の前で馬に跨っていたのは、

「タレスリレウト…?」

そう。吟遊詩人のタレスリレウトだった。似てるとかじゃなく、間違いなく本人だ。

「お久しぶりです。事情についてはまた後程お話ししますので、まずは王宮へとご案内いたします」

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