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私はそんなじゃありませんよ。ただこうやって土をいじるのが好きなだけです
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「これが、貴殿の魔法か!」
ブルクバンクレンさんに私達の拉致を命令した領主様が、真冬に収穫された立派な雪瓜と二十日大根の山を見て吃驚の声を上げた。
「はい。しかも、収穫を終えた畑も、またそのまま春には作付けを行うことができます。私がお教えしたとおりにやれば、畑を休ませることなく、しかも、植える作物によっては一年に二回、収穫を得ることもできるのです。
そして、<悪魔のパン>の元凶となる悪い精霊がもし現れて小麦やライ麦の穂が黒くなった時には、私をお呼びください。どこからでも駆けつけて退治してご覧に入れます」
と胸を張って言ってみせた。
それにいたく感心した領主様は、
「お前の望む褒美は何なりと取らす! 是非ともこの国に留まってこれからも貢献して欲しい!」
とも言ったけど、それに対してはクレフリータが、
「畏れながら陛下。私どもは<商人>にございます。商売の為ならば足取り軽くどこへなりと赴き、何人の望みでも叶えてみせるのが役目。一つ所に留まることは、望みではございません」
って、結局断ってしまった。この場でそう言う前に、既に役人や大臣とも折衝してそれを認めさせる為に根回しはしてたらしい。だから領主様の<願い>を断ってもお咎めなしでいられたんだ。
それに、私は必要なことについては全部伝えるつもりだった。だからそれが終われば私がいなくても大丈夫な筈だ。<抗麦角菌魔法>についても、この国の魔法使いにきちんと伝授する。その為に種籾も調べさせてもらって、麦角菌に感染してるものも見つけ出した。それを使って実地に魔法がしっかりと伝わってることも確認する。
必要なのは知識だ。<私>じゃない。農耕に<英雄>はいらない。現場で作業をする人達に正しい知識が伝わることこそが望まれる。
その為に畑で土まみれになって仮住まいの屋敷に帰ってきた私に、監視役として同じ屋敷で寝泊まりしてるブルクバンクレンさんが話し掛けてきた。
「あなたは本当に不思議な人だ。人は誰しも地位や名誉や富を求める。なのにあなたからはそれを感じない。あなたは本当に聖者か何かなのか?」
そんな風に言われて私は苦笑いしか浮かばない。
「私はそんなじゃありませんよ。ただこうやって土をいじるのが好きなだけです。それが誰かの役に立つんなら嬉しいっていうだけです」
そうやってやがて飢餓をなくし戦争もなくしっていう目的はあるけど、さすがに失笑を買いそうだから言わないでおいた。
するとブルクバンクレンさんは、懐から封筒を取り出し、私に差し出してきた。
「あなた宛ての書簡だ。我々を襲った者達は確かに主にあなたの言葉を伝えたらしい。申し訳ないが、中身を確かめさせてもらった」
手渡された開封済みのそれに、私も目を通したのだった。
ブルクバンクレンさんに私達の拉致を命令した領主様が、真冬に収穫された立派な雪瓜と二十日大根の山を見て吃驚の声を上げた。
「はい。しかも、収穫を終えた畑も、またそのまま春には作付けを行うことができます。私がお教えしたとおりにやれば、畑を休ませることなく、しかも、植える作物によっては一年に二回、収穫を得ることもできるのです。
そして、<悪魔のパン>の元凶となる悪い精霊がもし現れて小麦やライ麦の穂が黒くなった時には、私をお呼びください。どこからでも駆けつけて退治してご覧に入れます」
と胸を張って言ってみせた。
それにいたく感心した領主様は、
「お前の望む褒美は何なりと取らす! 是非ともこの国に留まってこれからも貢献して欲しい!」
とも言ったけど、それに対してはクレフリータが、
「畏れながら陛下。私どもは<商人>にございます。商売の為ならば足取り軽くどこへなりと赴き、何人の望みでも叶えてみせるのが役目。一つ所に留まることは、望みではございません」
って、結局断ってしまった。この場でそう言う前に、既に役人や大臣とも折衝してそれを認めさせる為に根回しはしてたらしい。だから領主様の<願い>を断ってもお咎めなしでいられたんだ。
それに、私は必要なことについては全部伝えるつもりだった。だからそれが終われば私がいなくても大丈夫な筈だ。<抗麦角菌魔法>についても、この国の魔法使いにきちんと伝授する。その為に種籾も調べさせてもらって、麦角菌に感染してるものも見つけ出した。それを使って実地に魔法がしっかりと伝わってることも確認する。
必要なのは知識だ。<私>じゃない。農耕に<英雄>はいらない。現場で作業をする人達に正しい知識が伝わることこそが望まれる。
その為に畑で土まみれになって仮住まいの屋敷に帰ってきた私に、監視役として同じ屋敷で寝泊まりしてるブルクバンクレンさんが話し掛けてきた。
「あなたは本当に不思議な人だ。人は誰しも地位や名誉や富を求める。なのにあなたからはそれを感じない。あなたは本当に聖者か何かなのか?」
そんな風に言われて私は苦笑いしか浮かばない。
「私はそんなじゃありませんよ。ただこうやって土をいじるのが好きなだけです。それが誰かの役に立つんなら嬉しいっていうだけです」
そうやってやがて飢餓をなくし戦争もなくしっていう目的はあるけど、さすがに失笑を買いそうだから言わないでおいた。
するとブルクバンクレンさんは、懐から封筒を取り出し、私に差し出してきた。
「あなた宛ての書簡だ。我々を襲った者達は確かに主にあなたの言葉を伝えたらしい。申し訳ないが、中身を確かめさせてもらった」
手渡された開封済みのそれに、私も目を通したのだった。
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