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ここではそれこそ日常茶飯事で行われてる<普通の行為>であって

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その後は大きなトラブルもなく、ブルクバンクレンさんの<主>がいるという、<ヘルデカイラス公国>へと到着した。そこで、先の戦闘で重傷を負ったブルクバンクレンさんの部下達は病院へと搬送された。まあ、<病院>といっても私がまず頭に思い浮かべるような立派なそれじゃなくて、今なら個人医院でももっと立派なのがあるよねって感じの小さなものだけどね。

それに、そこで行える<治療>も、私が魔法使いとして行うものと大差ないから、敢えてバンクレンチの部下は病院には収容してもらわず、私がそのまま治療にあたる為に、この後も同行する。知らないところで仲間から引き離されたら不安だろうからさ。

「さっそくで申し訳ないですが、私の主に会っていただきます」

休む暇もなく連れて行かれたのは、当然のことながら王宮だった。その後であったことについては、ファルトバウゼン王国とかブラドフォンセス王国であったことと全く同じだから、詳しい説明は割愛させてもらおう。

しっかし、国王とか領主とかってのはどうしてこう、形式ばった仰々しいのが好きなのかなあ。ファルトバウゼン王国の国王陛下は割と気さくな人だったけど、それでも最初は謁見の間で玉座にふんぞり返って偉そうにしてたし。

ま、他の人達に対して威厳を示さないといけないってのもあったのかもだけどさ。

「貴国にも、プリエセルエラ公国と等しく力をつけていただくことをお約束いたします」

と、しっかり言わせてもらった。

で、当然、ここでも今までと同じようにやる。何も変わったことはしないし、私達を無理やり連れてきた、いけ好かない連中の国だからって手を抜いたりもしない。平和な日本で生まれ育った人間にとってはとんでもない行為に思えても、ここではそれこそ日常茶飯事で行われてる<普通の行為>であって、ここの領主にもブルクバンクレンさんにも、<悪気>なんて微塵もない。

完全に<正当な行い>だと心から信じてるんだ。だから私も、敢えてそれを責めるようなこともしない。そんなことしたところで、『何を言ってるんだ、この者は?』みたいな顔をされるだけなのは分かってるから。

そんな訳で、ここ、ヘルデカイラス公国主都ヘルデクリエラでも、<カリン商会の支社>にあたる<タルハ商会>を立ち上げて、これまでと同じ要領で堆肥の普及と使用法の指導を行った。それしかできないから。

「もっと早く結果は出せないのか?」

なんて役人に突っつかれたりもしたけど、

「無理です。強引なことをすると精霊に嫌われて畑が呪われてしまいます」

って突っぱねてやったのだった。

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