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要はお互いに益になるものを提示すれば済む話だ。その用意は既にしてある

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戦いを終えて応急処置も終えて、私達はようやく一息付けた。

「あなた方はどこの手の者ですか?」

ブルクバンクレンさんが盗賊(の格好をした誰か)の一人の胸倉を掴んで起こし、そう尋ねる。でも、当然、相手もそれで答える訳でもない。

するとブルクバンクレンさんは、穏やかに笑った顔をしたまま、私が応急処置した傷口をぐりぐりと親指でこじり始めた。

「ぐうっ!」と傷付いた盗賊(の格好をした誰か)が呻く。それでも容赦しない。

「拷問は趣味じゃないんですが、これも仕事ですので」

あくまで言葉遣いは丁寧で優しい感じの声だけど、その奥にあるものは氷のように冷たく感じられる。

だけど、

「もういい。貴殿も仕事だろうが、彼らも<仕事>でやってるだけだ。それに用があるならこちらも話くらいは聞く用意がある。それよりも貴殿の主の下に早く向かいたい。先に派遣した部隊が失敗したとなれば次が派遣される可能性もあるだろう。いつまでもここに留まるのは得策じゃないと思うが?」

と、腕を組んで憮然とした様子のクレフリータが言うと、ブルクバンクレンさんもあっさりと掴んでいた手を放して、

「それもそうですね」

って応えた。

それを確認したクレフリータは、体を起こすこともままならない盗賊(の格好をした誰か)達に向かって、言い放つ。

「お前達の主に伝えろ。こんな真似をせずとも書簡の一つでも寄こせば悪いようにはしないと。私達は<商人>だ。儲け話になるのなら誰とでも話すし誰とでも会う。お互いに益になる話をしようじゃないかとな」

そんなクレフリータにブルクバンクレンさんは、

「私達の方が先約ですから、そんな勝手なことを言われても困るんですがね」

なんて苦笑いを浮かべるけど、当然、クレフリータは気にもしない。

「集団で取り囲んで私達を連れてきた人物の言葉とは思えんな。だが、心配要らん。貴殿の主ともきちんと話は付けてやる。要はお互いに益になるものを提示すれば済む話だ。その用意は既にしてある」

「その言葉が嘘でないことを祈りますよ。でないと私が主人に怒られてしまう」

「案ずるな。貴殿にとっても益になるように差配してやる」

「……まったく、底の知れないお嬢さんだ。ですが敢えてそれに乗るのも面白そうですね」

とか何とか、私の与り知らないところで<表も裏も知り尽くした者同士>らしい会話が繰り広げられて、私自身は苦笑いを浮かべながらそれを見守るしかできなかった。

「怪我はありませんか?」

そう声を掛けてくるルイスベントにも、「はは…」と乾いた笑いしか向けられなかったのだった。

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