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直接命を奪う為の魔法を躊躇うことなく使うのは今はまだ無理でも

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正直、兵士全員が常に真面目に訓練に励んでる軍隊とかの方が実は珍しいらしい。一応、厳しい規律はあってもそれは事実上の有形無実だったりして、訓練自体も手を抜いてたりするんだって。

変に実戦経験が多いところほどその傾向は顕著で、『いつ命を落とすかもしれないから』っていうのを言い訳に、『思い残すことが無いように今のうちに楽しんでおけ』みたいな考えが支配的なんだそうだ。

だから確かに実戦経験は豊富で、敵の命を奪うことにも躊躇はないから間違いなく強いんだけど、それって結局、『気持ちの上での強さ』なだけで、純粋な『体幹の強さ』では、とんでもないレベルってわけでもないみたい。

なんか、面白いな。

いや、リアルな<殺し合い>をしてるんだから、面白がってちゃいけないんだろうけどさ。

実際、とても真っ直ぐ見てられない。何人もの人が次々と倒れていくのが分かる。

「いやだ…! 死にたくない…!」

とか声を上げてるのもいた。

それが、私の<仲間>でないことを祈る。

だから私も、仲間達を守る為に<魔法>を使った。直接命を奪う為の魔法を躊躇うことなく使うのは今はまだ無理でも、小さな旋風を起こして敵の意識を逸らさせ、そういう形で支援する。

もちろんそのことが人の命を奪う可能性の手助けになってることも分かってる。それを平気でできてる訳でもない。だけどこの時は、バンクレンチ達を守りたい一心でそうしたんだ。

しかも、後で分かったことだけど、この時、盗賊のふりをしていた敵の兵士達は、私が魔法使いだっていう情報も掴んでて、攻撃魔法から身を守る為の護符を身に付けてた。

だけど私が使ったのは、あくまで小さな風を起こすだけの魔法で、さらには起こした風そのものは本当にただの<風>だから、護符による守護は関係なかった。

私が敢えて強い攻撃用の魔法を使わなかったことが逆に功を奏した形だな。

そしてこれも、クレフリータの発案で用意していた<備え>だった。命を奪うことに少なくない抵抗のある私でもできる<援護>だった。

そんなこんなで、私の感覚だと三十分くらいかかった気がしてた(実際には五分くらいだったらしいけど)戦いは終わりを告げ、何人もの人が地面に倒れて呻き声をあげたりしてる光景が広がってた。

既に手の施しようのない人も少なくない中で、私はまだ助かる可能性のありそうな人については、応急処置をした。

それは、バンクレンチ達、私の<仲間>が無事かどうかを確かめる為の作業でもあった。事実、一人が危険な状態だったんだ。

「さ……寒い……」

失血のせいで寒さを訴えるその彼の出血をとにかく止めて、免疫に働きかけて生きようとする力を下支えする。そのおかげもあって、辛うじて一命をとりとめたのだった。

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