何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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農家の人達がこれまで土に対して込めてきた想いがあるからなんだ

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一部には失敗もありつつ、でも全体としては十分な成果を上げた私達に、<ちょび髭の領主様>はいたく感心したみたいだった。

「いやはや、これはまさに魔法だ。いや、余が知るいかな魔法使いでもこれだけのことを成し遂げられた者はいなかった。ノーラカリン、お前は当代一の魔法使いに相違ない!」

なんて領主様は褒めちぎってくれたけど、私のやったことなんて結局、先人達が努力を積み重ね、トライ&エラーを繰り返してきた結果に倣っただけに過ぎない。いずれはこの世界の人達だって同じことに辿り着けてたはずだ。私がすごいんじゃない。先人達のおかげなんだ。

それでも今は、敢えて私の手柄ってことにさせてもらう。この実績を基にして収穫量を上げることに協力してもらわなきゃいけないから。これが説得力になるから。

モルスエイトさんの畑で土まみれになって分かった。この国の農家の人達も真摯に土に向き合ってきたんだって。国の失策や気候の影響や作物の病気とかで凶作だったりすることはあっても、素性は決して悪くない。ちゃんと頑張ってるのがすごく伝わってくる土だった。私はそれを活かしたいだけだ。この国の農家の人達の努力がちゃんと報われるように力になりたいだけだ。

その結果として、収穫量が増える。それだけの話なんだ。

私がいくら進んだ知識を持ってたって、土が駄目ならこんな簡単に結果は出ない。それこそ何十年と掛かる。それがすぐにこんな風に上手くいくのは、元が良いからなんだよ。農家の人達がこれまで土に対して込めてきた想いがあるからなんだ。

この成果は私の力じゃない。モルスエイトさんをはじめとした、あの畑に代々関わってきた人達の力なんだよ。

改めてそれを実感して、私は何だか涙が出そうになってた。

「陛下! 私はこの地の神と、この地で土を育ててきた人々にこそ感謝します。そしてその人々を導いてきた陛下こそが、この結果を導いたのです!」

すごく芝居じみた言い方だったけど、自然とそう言えた。胸を張り、腹の底から声が出た。

私の目的を達成する為には必要なことだ。だからそうする。私にできない部分は、クレフリータやみんなが補ってくれる。

私一人でできることなんてたかが知れてる。魔法が使えて多少進んだ知識を持ってても、単にそれだけだ。その程度じゃ、ここまでこれなかった。こんな風に領主を相手に堂々と受け答えだってできなかったと思う。

だからこそ、目的を果たしたい。私の為に、私の目的の為に、協力してくれるみんなの為に。

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