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これまでにもお前と同じようなことを言って近寄ってきた者どもがどうなったか教えてやろう
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無許可で小麦を栽培してたことがバレて逮捕された私達は、でもクレフリータの<袖の下>のおかげで乱暴にされることもなく、領主のところに連れて行かれただけだった。
「お前達が、我が国の計画生産を愚弄した者共か」
ちょび髭の、マンガみたいな<いかにも小悪党風お大臣>って感じの領主が自分の髭をいじりながら聞いてくるから、私は、
「そうです。私の技術を貴国に売り込みたく、その為の下準備として試していました」
と、変に隠し事をせずにこれ幸いと正直に応えた。
「技術だと? それはどのようなものだ?」
「ムッフクボルド共和国で発生した<悪魔のパン>を打ち滅ぼし、この国に豊饒の精霊を導く為の技術です」
以前、クレフリータに言われた通り、堂々と、自信満々に、臆することなくはったりをぶちかます。はったりじゃなけど。ホントのことだけど。
でもそういうのを信じられない相手にとっては、すぐには受け入れがたいことなのも事実だからね。
実際、私達の目の前にいた<ちょび髭の領主様>も、私を馬鹿にするかのように「はっ!」と鼻で笑った。
「これまでにもお前と同じようなことを言って近寄ってきた者どもがどうなったか教えてやろう」
そう言いながら、<ちょび髭の領主様>は自分の首を親指で指し示し、ギッとそれを横に動かした。『処刑した』っていう意味だろう。だけどその程度のことは、私達だって承知の上だ。
「領主様。こちらの、私の主人たるノーラカリンめが申すことは誠でございます。領主様の、ひいてはこのムッフクボルド共和国そのもののお役に立ちたいと志し、参ったのにございます。つきましては、こちらの品をお近付きの印として献上いたしたく存じます」
なんて、クレフリータが恭しく懐から取り出したのは、例の金湯香の種が入った袋だった。それを、近くにいた文官らしき人に目配せして受け取らせ、その文官が領主様のところへとその小袋を届ける。
そして、文官の人にその中身を取り出させて確認した領主様が、ガタッとばかりに玉座から腰を浮かせた。
「こ……これは…!? これほどのものを献上してなお、お前達にも益があるものを、お前達は持っていると言うのか…!?」
その反応に、ベルトマクタから上金貨十三枚で買い取った全部を渡したのだと私にも察せられてしまった。普通に買えば上金貨五十枚、日本の貨幣価値にして約五億円分をいっぺんに…!?
てっきり、他の領主や貴族にも少しずつ袖の下代わりに配るのかと思ってたから、私まで唖然としてしまう。でもその動揺は、なるべく顔に出さないように努力しつつ。
そこからはもう、クレフリータの独壇場なのだった。
「お前達が、我が国の計画生産を愚弄した者共か」
ちょび髭の、マンガみたいな<いかにも小悪党風お大臣>って感じの領主が自分の髭をいじりながら聞いてくるから、私は、
「そうです。私の技術を貴国に売り込みたく、その為の下準備として試していました」
と、変に隠し事をせずにこれ幸いと正直に応えた。
「技術だと? それはどのようなものだ?」
「ムッフクボルド共和国で発生した<悪魔のパン>を打ち滅ぼし、この国に豊饒の精霊を導く為の技術です」
以前、クレフリータに言われた通り、堂々と、自信満々に、臆することなくはったりをぶちかます。はったりじゃなけど。ホントのことだけど。
でもそういうのを信じられない相手にとっては、すぐには受け入れがたいことなのも事実だからね。
実際、私達の目の前にいた<ちょび髭の領主様>も、私を馬鹿にするかのように「はっ!」と鼻で笑った。
「これまでにもお前と同じようなことを言って近寄ってきた者どもがどうなったか教えてやろう」
そう言いながら、<ちょび髭の領主様>は自分の首を親指で指し示し、ギッとそれを横に動かした。『処刑した』っていう意味だろう。だけどその程度のことは、私達だって承知の上だ。
「領主様。こちらの、私の主人たるノーラカリンめが申すことは誠でございます。領主様の、ひいてはこのムッフクボルド共和国そのもののお役に立ちたいと志し、参ったのにございます。つきましては、こちらの品をお近付きの印として献上いたしたく存じます」
なんて、クレフリータが恭しく懐から取り出したのは、例の金湯香の種が入った袋だった。それを、近くにいた文官らしき人に目配せして受け取らせ、その文官が領主様のところへとその小袋を届ける。
そして、文官の人にその中身を取り出させて確認した領主様が、ガタッとばかりに玉座から腰を浮かせた。
「こ……これは…!? これほどのものを献上してなお、お前達にも益があるものを、お前達は持っていると言うのか…!?」
その反応に、ベルトマクタから上金貨十三枚で買い取った全部を渡したのだと私にも察せられてしまった。普通に買えば上金貨五十枚、日本の貨幣価値にして約五億円分をいっぺんに…!?
てっきり、他の領主や貴族にも少しずつ袖の下代わりに配るのかと思ってたから、私まで唖然としてしまう。でもその動揺は、なるべく顔に出さないように努力しつつ。
そこからはもう、クレフリータの独壇場なのだった。
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