何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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平和で理想的な良い国を、住人総出で全力で演出してる

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ムッフクボルド共和国の街で商売を始めた私達は、あまり目立つようなことは避ける為に無茶はしなかった。私が魔法を使って調合した薬を売ったり、例のベルトマクタを通じて手配したルートを使って、ムッフクボルド共和国の品物を輸出したり、逆に外国の品を持ち込んで売ったりした。

その辺りも本当は管理されてる筈なんだけど、御禁制の品とかでもないかぎり、大っぴらにしなければ時折回ってくる役人に<袖の下>を渡すだけで大目に見てもらえた。やれやれ。

そして一ヶ月ほどが経ち、私も何となくこの国のことが分かってきた。

<共和国>とは言いながらその実態は確かにいくつもの小さな国が集まってできた<連合国家>で、その連合国家全体を支配する君主がいないから取り敢えず共和国という体裁を保ってるっていうのもはっきり実感できたかな。

なにしろこの街を支配してるのがバリバリの貴族だし、ゴリッゴリの階級制度が残ってるし。

で、しかも、それぞれの小国で割と制度が違ってたりするらしい。<自治>という名目で。

だから逆に、ファルトバウゼン王国にいた頃と、細かい部分は違っても大きな差異はないってことで、案外、居心地は悪くなかったんだよね。住人達が妙に愛想笑いを浮かべてる気がする以外は。

なんだろう? 『平和で理想的な良い国を、住人総出で全力で演出してる』、みたいな? その分、表向きは治安は良かったかな。暴力事件があったりすると、すぐ死刑にしてたみたいだし。

だけどねえ。その割には頻繁に起こってた気がするんだよね。喧嘩とか。現場を役人に見られたら死刑になるっていうのに、ホントに些細なことで喧嘩してんの。なんか、相当、鬱屈したものを抱え込んでるみたい。

それは、貴族と、貴族が従えてる役人がやけに偉そうだからっていうのもあるのかな。ホントつまらないことで言いがかりをつけてきては袖の下を要求するんだよ。

私達はここで儲けるつもりないからそんなに気にならないんだけど、税金以外でも何だかんだで取られてるよ。立場上<従業員>ってことになってる、ルイスベントやバンクレンチ達に給料払ったら手元には雀の涙しか残らない程度には。

これじゃ、ここで生活してる人達には鬱憤が溜まるでしょうね。

クレフリータが言う。

「その辺りの不満のはけ口としても戦争が利用されているという実態はあるようだ。侵攻した先で略奪しようが蹂躙しようがお構いなしだそうだからな。しかも、その戦争自体、それぞれの小国が勝手に起こせるらしいのだ」

だって。

だから、『ムッフクボルド共和国政府としては承知してないのに、それぞれの国が勝手に<ムッフクボルド共和国以外の国>に対して略奪行為を行ってる』っていうのが、実体らしいんだよね~。

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