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来年の収穫期にはそれなりの結果を出さないと

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正直、時間がかかりそうとは思っていたけれど、実はあまりゆっくりもしてられないという事情もある。例の<悪魔のパン>騒動で交易が滞り、ムッフクボルド共和国内で物資が不足し始めているという推測がされてるんだ。

「今年の冬はなんとかなっても、来年にはどうか分からん。だから、来年の収穫期にはそれなりの結果を出さないと戦争になる可能性がある」

とは、クレフリータの分析。

「それでは、次の春までには準備を終えていないといけませんね……」

ルイスベントが厳しい顔で唸る。

確かにその通りだ。これは、一週間や二週間で結果が出ることじゃない。作付が始まる頃には対処できないと、収穫を大きく増やすことは難しい。

この街の有力者っていうのに挨拶に行った帰り、紹介された<事務所>用の建物をチェックしながら私達は今後について話し合う。

ただ、バンクレンチ達はそれよりも、

「こんなボロ家、使い物になるんですか?」

とぼやいていた。まあ、彼の愚痴も当然かな。確かに紹介されたそれは、ほぼ廃屋のような酷い有り様だったし。

でも、得体の知れない余所者でかつ新参者となれば、この扱いもむしろ普通じゃないかなって気はする。

「建物自体はしっかりしていますし、丁寧に手直しすれば大きな問題はないでしょう」

ルイスベントは、軍事関係よりは農業、産業に詳しいから、そちらからの見地としての意見だった。私も、彼の意見に賛成だ。このくらいは<想定の範囲内>ってやつだよ。

バンクハンマの畑でしごかれた兵士達も、バンクレンチの指示の下、実にてきぱきと動いてくれて、廃屋同然だったそこは見る間にそれなりのものへと変わっていった。

「うむ。これで寝床程度にはなるだろう。皆、よく働いてくれたし、今から酒場にでも繰り出すか。私のおごりだ」

クレフリータが腕を組みながらニヤリと笑う。

「うおっしゃあ、待ってました! これがあるから頑張れるんだよな」

バンクレンチが声をあげて、兵士達と肩を叩きあう。

この辺の人心掌握はそれこそクレフリータの独壇場だな。

日本で言うところの<飲みニケーション>ってところだろうけど、それが廃れつつある日本と比べ、何だかんだとそういうのが有効なんだろうな。ここでは。

外国人向けの酒場で陽気に盛り上がるバンクレンチ達を横目に、私とクレフリータとルイスベントは、改めて今後について話し合っていた。

「明日は、現地の人々向けの市場に出向いて、情報収集する。既に当たりは付けているが、より確実なものにする為だ。あと、この地の<領主>の元にも顔を出し繋いでおきたい。せっかくこれも用意したんだからな」

と言いながら、例の小袋を入れた胸元をとんと叩いたのだった。

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