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この国の制度そのものを変えることは私にはたぶんできない

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<共和国>とか名乗りながら<領主>がいるとか、食料は配給制とか、いろいろ疑問を感じる部分もあるのが、このムッフクボルド共和国なんだというのを改めて実感した。

もっともその辺りは、地球だって似たようなものか。共和国といいながらも実質的な<君主>がいる国だってある。対外的には共和国って言われてても正式な名前には<王国>ってついてる国だってある。だからこの世界が特別おかしい訳じゃない。

そんなことを思いつつ、私達は馬車を進めた。

<首都>を目指しながら道々で話を聞くけど、返ってくる答えは決まって、「領主様が」って言葉が含まれてた。もちろんそれも、ファルトバウゼン王国だってそう大差ないと思いながらも、何とも言えない違和感も覚える。本当にまるでお芝居を見てるような気がしてくる。

それは、クレフリータが言う通り、『よく訓練されてる』からなのかな。

途中の街とかで<商店>に入ると、それはあくまで国外から来た人向けの店らしくて、殆ど客の姿がなかった。店の従業員も愛想はいいけど、商売について熱心かって言うと、そういうのとも違う気もする。やっぱりそれも<お芝居>っていう印象かな。

商品の品揃えも決して良いとは言えない気がする。

品質そのものはファルトバウゼン王国のそれと極端に劣ってるとは思わないけど、とにかく活気がないんだ。生活物資は基本的に<配給>で、元々住んでる人達が客としてこないからっていうのもあるんだろうな。

あと、品揃えが良くないのは、今回の<悪魔のパン>騒動の影響で流通が減ってるってこともありそうだ。

それと、大きく印象が違うのは、奴隷と思しき人の姿がまったく見られないこと。だけどこれは、<奴隷がいない>っていうことじゃないみたい。

クレフリータが言う。

「ムッフクボルド共和国では、表向き、<奴隷はいない>ということになっている。が、これについてはただの建前だな。実際には労働力の実に四割が奴隷によって賄われてるという話もある。ちなみに我がファルトバウゼン王国では平均して二割ほどだ。同盟国もおおむね似たようなものだから、このムッフクボルド共和国での奴隷に対する依存度の高さが分かるというものだろう。

しかし表向きは奴隷はいないことになってるから、奴隷とは一見しただけでは分からないようになっている。それでいて実体は、労働力として非常に安価な奴隷に頼らなければ成り立たない、<虚飾の国>という面もあるのだ」

そう言われると「なるほど」と応えるしかなかった。

この国の制度そのものを変えることは私にはたぶんできない。だけど生産力を上げるのと、不測の事態に備えた対応策を提供するのはできると思う。

それを目指すことになるんだな。

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