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実際にぶつかる現場の人間達はそれ自体が日常になってしまってて

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ネセルグルスク王国とムッフクボルド共和国は長年争いを続けてきた国ってこともあって国境線が曖昧で、その所為か、幅三百メートルほどの<どちらのモノかよく分からない曖昧な地帯>っていうものを挟んで接してた。

しかもその<曖昧な地帯>にはまるでスラムのような町が点々とあって、難民や犯罪者的な人達が勝手に住み着いてるらしかった。

彼らはどちらの国にも属さない、属せない人達でもある。ネセルグルスク王国側から人間が入ってくるとその情報をムッフクボルド共和国側に伝えて、ムッフクボルド共和国側から人間が入ってくるとネセルグルスク王国側に伝えるなんてこともしてるらしい。

「双方の国が戦争になると、その旗色に従ってどっちにもつく者達だ」

メロエリータ、いや、今はクレフリータ(皮肉屋リータ)が冷淡な目でその町を見詰めながら言う。

「まったく信念も何もない浅ましい者達です……」

キラカ…じゃないルイスベントは忌々しそうな目で言った。彼がそう思うのも無理はないだろうけど、この人達のような生き方だって状況によっては選択する必要があるんだろうな。

「ただ、ここが双方の交易の中継地になっているのも事実だ。それを見越した商売人も多数入り込んでいる。情報も集まる」

ということは、ネセルグルスク王国側に入った、麦角菌汚染された小麦もここを中継して入ったってってことかな。

ネセルグルスク王国側の境界は、高さ一メートル五十くらいのイバラの生垣で区切られ、関には何人もの兵士が立ってた。

それだけじゃない。生垣に沿ってもずっと向こうまで兵士の姿が見えるのは、また戦争になるのを警戒してのことなんだろうな。

とは言え、現代の地球の、緊張状態にある国境付近の様子とかと比べると何だか思ったほどの緊張感がないようにも思える。国同士では争ってても、実際にぶつかる現場の人間達はそれ自体が日常になってしまってて、慣れてしまってるのかもね。

<生きるも死ぬも運次第>。そんな開き直りもあるのかもしれない。

関を通る為に、私達は予めネセルグルスク国王直々の使いを出してもらって、段取りを決めていた。警備の隊長さんに<袖の下>を渡し見逃してもらうというていで関を通る。当たり前のように横行し、黙認されてる行為だった。

ただ、気に入らないことがあるとあれこれ難癖付けて拘束されたりってこともあるから、万が一にもそうならないようにあらかじめ釘を刺してもらってたことだ。

彼らは私達の正体を知らない。でも、わざわざ王都から使いが来て<いつも通りに見逃せ。余計なことはするな>と言ってくるということは、間諜の類なんだろうなとは思ってるのかもしれないな。

なんか意味ありげなニヤニヤした顔で見てたし。

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