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正体を確かめて対抗手段を確立しなきゃいけない

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基本的には例の国の生産品は流通してない筈でも、魔法のおかげもあって食料品の流通が昔の地球よりははるかに盛んなこの世界では、思いもよらないルートで入ってくることがないとは言えない。だから、出所の知れないものには迂闊に手を出さない方がいいのは確かなんだ。

だからと言って、変に不信感が広まってパニックになってもいけない。そこで私は、ここまで調べた資料をまとめて、町長のところまで説明に行った。その間に、メロエリータには、私自身がその国に入国する方法を探ってもらう。とにかく現場に行って、状況を確認したい。麦角菌に汚染された小麦の現物も手に入れたい。麦角菌そのものを手に入れて、それに対抗する手段を見付けなきゃいけない。

「とにかく、これはあくまで、<麦角菌>と呼ばれる悪い精霊に憑りつかれた麦を使った食べ物を食べたら起こるただの病気です。人には伝染うつりません。だからもし<悪魔憑き>のような症状が出たとしても、他の人に呪いが伝染うつることもありません。

症状が軽ければ、<麦角菌>に憑りつかれてない食べ物を与えるようにすれば治る場合もあります。

一番怖いのはパニックです。それを封じたい」

そう告げる私に、マイトバッハ町長も、

「ええ、それは私も危惧しているところです。かつてこの国でも同じことが起こった時には、その症状が出た人の家族全員が悪魔を招いたものとして処刑されたという記録もあります。カリン卿のおっしゃることは実に的確で論理的で理性的だ。私もあなたの考えに賛同します」

と理性的に応えてくれた。

「ありがとうございます。これで私も、安心して<麦角菌>退治に出掛けられます」

これと同じようなやり取りは、メロエリータが出向いた議会でもあったらしい。農業を管轄するトランゼンベス卿との話し合いで、互いにこの国を守る為にと手を取り合ったそうだ。

農業・産業の分野と軍事の分野とに分かれてると言っても、この国を守る為に働いてるという意味では同じだからね。

国難が迫ってるかもとなれば協力もするよね。

と言っても、さっきも言ったようにあの国の生産品は国内では流通してないという<建前>にはなってるから、あくまで用心の為という段階ではある。でも、麦角菌が流行した地域があったということはその麦角菌そのものがこの国に入ってくる可能性もある。それを想定し対処するのは必要なことなんだ。

そして何より、この世界における麦角菌(厳密にはそれに相当する菌)の正体を確かめて対抗手段を確立しなきゃいけない。情報だけ提供して人に任せてもいいかもだけど、それでは時間がかかりすぎるかもしれないから、私が行くんだ。

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