88 / 535
ああ~、自分が日本人だってことを思い知らされるぅ~…!
しおりを挟む
「あ~、やっぱり家はいいわ~……」
アウラクレアが待つクレガマトレンのカリン商会本社兼家に帰って、私はソファーに沈み込んでた。
マジで家の良さを実感する。
しかもそれだけじゃなかった。
「これ、<コメ>って言うらしいね? カリンの言ってた通りに炊いてみたんだけど、どうかな。上手く作れたかな」
「うお~っ! これだよこれ! 白いご飯~っ!!」
アウラクレアが私の前に出してくれたのは、ホッカホカで湯気を上げる真っ白(って現代日本の精米技術に比べるとちょっと玄米ご飯っぽい色味はあったけど)な<白ご飯>だった。
試験用に畑を買って作ってもらってたのがようやく収穫できたってことだ。
他には何もない、完全にご飯だけだったけど、今はそれで十分だった。ご飯そのものを味わいたかったから。
何度も何度も噛み締めて口の中に広がるご飯の<味>を、私はとにかく堪能した。
美味しい! たまらない! 泣ける……!
ホントに涙が溢れてきて止まらない。
ああ~、自分が日本人だってことを思い知らされるぅ~…!
たぶん、今の日本産のお米に比べればまだまだな品質だと思う。精々が三等米か、ギリギリ二等米にかすってるかなくらいだろう。だけどそれで当たり前なんだ。日本のお米の美味しさは、米農家の人達の並々ならない努力の積み重ねの結果なんだから、ようやく手に入れた種籾をそのままロクに選別もせずに蒔いて何とか育てただけのものと一緒にするのが間違ってる。むしろ規格外相当で当然だ。
それを、ここまでまともな米に育て上げた人には感謝しかない。そしてその<人>とは、バンクハンマだった。
自分の畑も見ながら、カリン商会の試験用畑も担当してくれた。もちろんバンクハンマだけじゃなくて、王国の農業技術者達がその畑で作物の研究をしてる。その成果がこの<米>だ。
「なんかただ真っ白くてねとねとしてるだけで、あんまり美味しそうに見えないんだけど、カリンにとっては泣くほど美味しいんだね」
アウラクレアが苦笑いしながらそう言った。まあでもこれは食文化の違いだから彼女がそう思うのも無理ないことだ。
「故郷の味ってやつだからね~…」
彼女もそれで納得してくれる。
あの畑では大豆も試してるところだ。ただし、味噌や醤油を作るには麹菌やら乳酸菌やら酵母やらといった様々な細菌を確保しなきゃいけないからそれはこれからだけど、米だけでも用意できるようになったのは、本当に励みになる。
これから米そのものの品質も上げていって、売り物にしていくことを目指したい。
と言っても、この辺りじゃやっぱり小麦のシェアが盤石だと思うけどね。
アウラクレアが待つクレガマトレンのカリン商会本社兼家に帰って、私はソファーに沈み込んでた。
マジで家の良さを実感する。
しかもそれだけじゃなかった。
「これ、<コメ>って言うらしいね? カリンの言ってた通りに炊いてみたんだけど、どうかな。上手く作れたかな」
「うお~っ! これだよこれ! 白いご飯~っ!!」
アウラクレアが私の前に出してくれたのは、ホッカホカで湯気を上げる真っ白(って現代日本の精米技術に比べるとちょっと玄米ご飯っぽい色味はあったけど)な<白ご飯>だった。
試験用に畑を買って作ってもらってたのがようやく収穫できたってことだ。
他には何もない、完全にご飯だけだったけど、今はそれで十分だった。ご飯そのものを味わいたかったから。
何度も何度も噛み締めて口の中に広がるご飯の<味>を、私はとにかく堪能した。
美味しい! たまらない! 泣ける……!
ホントに涙が溢れてきて止まらない。
ああ~、自分が日本人だってことを思い知らされるぅ~…!
たぶん、今の日本産のお米に比べればまだまだな品質だと思う。精々が三等米か、ギリギリ二等米にかすってるかなくらいだろう。だけどそれで当たり前なんだ。日本のお米の美味しさは、米農家の人達の並々ならない努力の積み重ねの結果なんだから、ようやく手に入れた種籾をそのままロクに選別もせずに蒔いて何とか育てただけのものと一緒にするのが間違ってる。むしろ規格外相当で当然だ。
それを、ここまでまともな米に育て上げた人には感謝しかない。そしてその<人>とは、バンクハンマだった。
自分の畑も見ながら、カリン商会の試験用畑も担当してくれた。もちろんバンクハンマだけじゃなくて、王国の農業技術者達がその畑で作物の研究をしてる。その成果がこの<米>だ。
「なんかただ真っ白くてねとねとしてるだけで、あんまり美味しそうに見えないんだけど、カリンにとっては泣くほど美味しいんだね」
アウラクレアが苦笑いしながらそう言った。まあでもこれは食文化の違いだから彼女がそう思うのも無理ないことだ。
「故郷の味ってやつだからね~…」
彼女もそれで納得してくれる。
あの畑では大豆も試してるところだ。ただし、味噌や醤油を作るには麹菌やら乳酸菌やら酵母やらといった様々な細菌を確保しなきゃいけないからそれはこれからだけど、米だけでも用意できるようになったのは、本当に励みになる。
これから米そのものの品質も上げていって、売り物にしていくことを目指したい。
と言っても、この辺りじゃやっぱり小麦のシェアが盤石だと思うけどね。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
お姉さまは酷いずるいと言い続け、王子様に引き取られた自称・妹なんて知らない
あとさん♪
ファンタジー
わたくしが卒業する年に妹(自称)が学園に編入して来ました。
久しぶりの再会、と思いきや、行き成りわたくしに暴言をぶつけ、泣きながら走り去るという暴挙。
いつの間にかわたくしの名誉は地に落ちていたわ。
ずるいずるい、謝罪を要求する、姉妹格差がどーたらこーたら。
わたくし一人が我慢すればいいかと、思っていたら、今度は自称・婚約者が現れて婚約破棄宣言?
もううんざり! 早く本当の立ち位置を理解させないと、あの子に騙される被害者は増える一方!
そんな時、王子殿下が彼女を引き取りたいと言いだして────
※この話は小説家になろうにも同時掲載しています。
※設定は相変わらずゆるんゆるん。
※シャティエル王国シリーズ4作目!
※過去の拙作
『相互理解は難しい(略)』の29年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の27年後、
『王女殿下のモラトリアム』の17年後の話になります。
上記と主人公が違います。未読でも話は分かるとは思いますが、知っているとなお面白いかと。
※『俺の心を掴んだ姫は笑わない~見ていいのは俺だけだから!~』シリーズ5作目、オリヴァーくんが主役です! こちらもよろしくお願いします<(_ _)>
※ちょくちょく修正します。誤字撲滅!
※全9話
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
もういらないと言われたので隣国で聖女やります。
ゆーぞー
ファンタジー
孤児院出身のアリスは5歳の時に天女様の加護があることがわかり、王都で聖女をしていた。
しかし国王が崩御したため、国外追放されてしまう。
しかし隣国で聖女をやることになり、アリスは幸せを掴んでいく。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる