何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十

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私もまだまだ、これからどうなるか分からないけどさ

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こうして私は、ツフセフラフト村を後にすることになった。今後も時々、状況を自分の目で確認したいし、来年の春には改めて指導にこなきゃいけないけど、ジャガイモの生育も順調だし、どうやら一番悪い想定で今後のスケジュールを組んでたのが、ひょっとすると変更する必要が出てきたりするかも知れないな。

それでも、あまり調子よくいくと後が怖いから、なるべく予定通りに進めるけどね。

最後に村の畑に立ち寄ると、また、ブルイドラエフと鉢合わせた。と言うか、彼はこうやって毎日、畑を見回ってるらしい。

「ジャガイモなんかどうすんだと思ってたが、なんか思ったよりいい感じで育ってるな。あれは青くなったり目が出たりすると毒を持つんだろ? 俺達はそれを嫌ってあまり食用にはしてこなかったが、あんたの言う通りにすれば大丈夫そうだ。

この辺りじゃ売りものにもならないが、買い取ってくれるところもあるそうじゃねえか。それもあんたが手配してくれたんだってな」

相変わらず少し怒ったような憮然とした態度ながら、言い方は割と丁寧で、彼なりに精一杯気遣ってくれてるのは分かった。

「私って言うか、私のスタッフが優秀だってことね。ジャガイモは好きな人は好きだから、出来さえ良ければちゃんと売れるよ。土寄せと脇芽摘みも忘れないでね」

「ああ。分かってる。あんたに言われた通りにやらずに失敗したら、それは俺達の責任だ。あんたはあんたの仕事をしてくれた。次は俺達が俺達の仕事をこなす番だ」

「…あなたもいい男だね。奥さん、大事にしてあげてよ」

「知ってたのか……参ったな……」

無骨そうな彼の顔がバツ悪そうに崩れる。頭を掻きながら日に焼けた顔が赤くなるのが分かった気がした。彼はつい先日、子供の頃からの知り合いの女性と結婚したばかりだそうだ。その奥さんの為にもこれから一層頑張らなくちゃいけない。

私の恋が破れた一方で、こうやって恋を実らせる人もいる。それを励みにして仕事に頑張る人もいれば、私は恋を諦めたからこそこれからの仕事に精を出すことになる。

その選択のどちらも決して間違ってないと思う。

この世界ではまだそういう考え方が広まってくるのはまだ先だろうけど、『結婚しない』とか『子供は要らない』とか、そういう価値観がいずれ無視できなくなってくるだろう。たとえそれを選ぶとしても、悔いのない人生を送れる世の中になってほしいと思う。

もっとも、私もまだまだ、これからどうなるか分からないけどさ。

けどまあ、今はとにかく、アウラクレアも待ってるし、家に帰るとしますか。

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