86 / 535
何か困ったことがあったら、必ず私に連絡してください
しおりを挟む
『恋は実らずとも、力にはなってくれる』
まったく……メロエリータってば簡単にサラッとそういうこと言ってくれるよね。でも、その通りなんだろうな。
キラカレブレン卿は、私情で自分の役目を投げ出したりしない人だとはここまでで感じてた。だからそれはいいんだ。
ただ、私がこれまでと同じように彼に接することができるのか、そういう意味では自信がない。
それでも、状況は進んでいく。
クレガマトレンへと帰るのを明日に控えた日、私は、業務を開始したカリン商会ツフセレリアス支社に出向いて、訓示を述べることになった。
「皆さんのおかげで無事に仕事が始められました。感謝します。しかし、大事なのはこれからです。皆さんの働きがこの国の未来に直結しているのだということを常に心掛け、国王陛下と臣民に恥じない仕事をと期待しています。
もし、困ったこと、分からないこと、悩ましいことがあれば、ちゃんと本社に連絡をください。大事なのは<報告・連絡・相談>です。それを忘れないでください。責任を取るのは私の役目です、皆さんではありません。皆さんはご自身の仕事を確実にこなしてください。私からは、以上です」
支社を任せることになる三人と固く握手を交わし、私は支社の建物を後にした。そのすぐ近くに用意された、実際に堆肥化したウンチの回収・運搬を担うことになる奴隷の子達の住居兼待機場所になる建物にも顔を出す。
「こんにちは、マスター!」
奴隷達のリーダーと副リーダーになるオムとイギの二人が、嬉しそうにそう声を掛けてくれた。この二人はリレに比べるとまだおどおどしてないところがあった。仕事も真面目だし、はきはきしてるし、リーダーにはうってつけだと思う。
「ありがとう。仕事、がんばってね」
オムとイギにそう言った後、整列してた他の奴隷達にも向き直って、
「それではみんなも、この、オムとイギの指示に従ってよろしくね。これは、私からの命令です」
『命令です』という私の言葉に、奴隷達の身がキュッと引き締まるのが分かった。緊張で血の気が引いてる子もいる。こういう反応にもさすがに少し慣れてきたかな。
「でも、もし、何か困ったことがあったら、必ず私に連絡してください。あなた達で勝手に解決しないようにしてください。それは、仕事のこともそうだし、あなた達自身のことでもそうです。怪我をしたとか、病気になったとか、誰かとケンカになったとか、そういうのは隠さないでちゃんと言うように。
いいですね?」
「…はい…!」
戸惑いながらもそう答えてくれる彼女達に、私は思わず微笑んでいたのだった。
まったく……メロエリータってば簡単にサラッとそういうこと言ってくれるよね。でも、その通りなんだろうな。
キラカレブレン卿は、私情で自分の役目を投げ出したりしない人だとはここまでで感じてた。だからそれはいいんだ。
ただ、私がこれまでと同じように彼に接することができるのか、そういう意味では自信がない。
それでも、状況は進んでいく。
クレガマトレンへと帰るのを明日に控えた日、私は、業務を開始したカリン商会ツフセレリアス支社に出向いて、訓示を述べることになった。
「皆さんのおかげで無事に仕事が始められました。感謝します。しかし、大事なのはこれからです。皆さんの働きがこの国の未来に直結しているのだということを常に心掛け、国王陛下と臣民に恥じない仕事をと期待しています。
もし、困ったこと、分からないこと、悩ましいことがあれば、ちゃんと本社に連絡をください。大事なのは<報告・連絡・相談>です。それを忘れないでください。責任を取るのは私の役目です、皆さんではありません。皆さんはご自身の仕事を確実にこなしてください。私からは、以上です」
支社を任せることになる三人と固く握手を交わし、私は支社の建物を後にした。そのすぐ近くに用意された、実際に堆肥化したウンチの回収・運搬を担うことになる奴隷の子達の住居兼待機場所になる建物にも顔を出す。
「こんにちは、マスター!」
奴隷達のリーダーと副リーダーになるオムとイギの二人が、嬉しそうにそう声を掛けてくれた。この二人はリレに比べるとまだおどおどしてないところがあった。仕事も真面目だし、はきはきしてるし、リーダーにはうってつけだと思う。
「ありがとう。仕事、がんばってね」
オムとイギにそう言った後、整列してた他の奴隷達にも向き直って、
「それではみんなも、この、オムとイギの指示に従ってよろしくね。これは、私からの命令です」
『命令です』という私の言葉に、奴隷達の身がキュッと引き締まるのが分かった。緊張で血の気が引いてる子もいる。こういう反応にもさすがに少し慣れてきたかな。
「でも、もし、何か困ったことがあったら、必ず私に連絡してください。あなた達で勝手に解決しないようにしてください。それは、仕事のこともそうだし、あなた達自身のことでもそうです。怪我をしたとか、病気になったとか、誰かとケンカになったとか、そういうのは隠さないでちゃんと言うように。
いいですね?」
「…はい…!」
戸惑いながらもそう答えてくれる彼女達に、私は思わず微笑んでいたのだった。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!
つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。
他サイトにも公開中。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる