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気力を取り戻した時点で解決したも同然だった

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ツフセフラフト村での件は、正直言って村の人達が気力を取り戻した時点で解決したも同然だった。あとは手順を踏めばいいだけだ。二年も三年も時間を掛けるのは、堆肥を大量に投入すれば手っ取り早く収穫量を増やせるっていう形での成功体験を積ませたくないっていうのもある。それをすると、何だかんだと理由をつけて堆肥を過剰に使用することに繋がっていく危険性があるから。

『使い方を間違えると呪われる』っていうのをむしろ定着させたいと思ってるかな。<便利なもの>っていうのは努めて抑制的に使わないと大抵、しっぺ返しがくるからね。『便利な未来の道具がポケットから出てくるアレ』でも散々描写されたことだけどさ。

時間がかかってもいいんだよ。大きなしっぺ返しの方が怖い。私の世界でも新技術とかを過信しすぎて公害を引き起こしてみたり大きな被害を出したりってことが過去に何度もあったんだ。そういうのから学ばないと。

カリン商会の支社の件も、さすがに痛い目を見たからってことで慎重に選んでくれてた。ツフセマティアス卿とキラカレブレン卿の知己が数人集められて、その中から三人、貴族の四男坊で学者肌って人と、役人の息子だけど役人は目指さず自分で商売をしてみたかったって人と、仕事は真面目だけどゴマすりが苦手で出世できなかったって人を選んで、ツフセフラフト村からほど近い町<ツフセレリアス>に、村を管轄する支社を立ち上げることになった。そういう人達は、下手なことをしてツフセマティアス卿やキラカレブレン卿の顔に泥を塗るとマズいっていう点からも自制してくれる可能性が高いから。

ツフセレリアスに支社を作るのも、規模や習慣もクレガマトレンとそんなに違わないからやりやすいだろうっていう目算がある。

あと、堆肥の回収・運搬業務については、本社でリレの下で働いてて仕事をしっかり覚えたオムとイギっていう子を寄越してもらって、こちらで都合した奴隷の子達のリーダーとサブリーダーとして就任してもらうことにした。

正直、奴隷の子達は自分の命が掛かってるからっていうのもあってか、すごく真面目で助かる。食事や健康管理が滅茶苦茶で体を壊すからしっかり働けなくなるだけで、<労働の対価>として身の安全と真っ当な生活を提供してあげればやっぱり頑張ってくれるんだよね。それが労働の対価になる時点でアレだけどさ。

教育を与えられてないから複雑な仕事は覚えられないかもっていう点でそもそも<お金になるような仕事>は任せてもらえないっていうのもあるかな。

本社勤務のリレをはじめとした奴隷の子達には、仕事の合間に読み書きを覚えてもらってる。そうすればいつか、奴隷としてじゃなく仕事ができるようになるかもしれないし。

この辺りじゃ奴隷に対する考え方もあって難しくても、国によってはたとえ奴隷でも能力さえあれば身を立てることができるところもあるって聞くし、いずれそういう国にカレン商会の支社を作る時には、奴隷の子達に支社の運営そのものを任せてもいいんじゃないかなって思ってるんだ。

ここまでで一ヶ月。土の状態を確認する為、一部に植えたジャガイモの土寄せと脇芽摘みがを始まった畑を、支社を任せることになる三人の研修を兼ねて見ながら、私はしっかり手応えを感じてたのだった。

『うん。いい感じだ…』

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