上 下
254 / 283
生まれきたる者

反発せずにはいられない

しおりを挟む
『邪魔する奴は力で捻じ伏せればいい』

『ムカつく奴はぶちのめせばいい』

『正しさは力で押し通し証明するものだ』

おそらく、この世ではそう考えている者が多数派だろう。

しかし冷静に客観的に考えてみるとそれは結局、

『何を<力>とするか?』

という話になりはしないだろうか?

<大きな声>や<弱者という立場>や<消費者という立場>や<読者・視聴者という立場>といったものが<力>になると気付かれれば、当然、その力でもって他者を捻じ伏せようとする者が出てくるのは自明の理ではないのか?

ならば、

『大きな声や立場に力を持たせなければいい』

という者も出てくるだろうが、では、それはどうやって実現する? また<力>でもって捻じ伏せるのか? しかしそうやって捻じ伏せようとして完全に成功した例というのは、人間の歴史上においてあったのか?

独裁者が理想とする社会を作ろうとして力で抑えつけようとして、それが何百年も何千年も成功してきている事例はあるのか?

大国が自分達の価値観を力尽くで押し付けようとした結果が、テロの横行という事態を招いているのではないのか?

テロとまでは行かなくても、大きな声で自分達の主義主張を押し通そうとする者や、弱者という立場を振りかざす者達に対して反発する者がいるのはなぜだ?

力で捻じ伏せようとされれば反発せずにはいられないのも人間ではないのか?

大きな声や立場を力として利用しようとしている人間を不快と感じる者が多いという事実は何を物語っているのだろう?

力に頼る者を不快と反発しつつ、なおも自分は力で他人を捻じ伏せようとするのか?

その矛盾に目を向けようとは思わないのか?

それは、宿角健雅すくすみけんがにも言えるだろう。

他人から力で抑え付けられようとすれば反発するにも拘らず、自分は他人を力尽くで抑え付けようとする。

自分がなぜ他人から疎まれるのか、その原因を考えようともしない。

正しいのは自分の方であり、自分のやり方が通じないとなればそれは相手が間違っているからだと考える。

実に幼稚で浅はかだと言わざるを得ない。

しかし、だからと言って、

『お前は幼稚な奴だ!』

と罵倒すれば、それこそ反発するだけだ。

罵倒されて嬉しい人間はそうはいない。たまに喜ぶ人間もいるかもしれないが、それだって相手によるだろう。

人間とはそういうもののはずだ。

蓮華はその事実と向き合う。

向き合うからこそ、今の自分に健雅を変える力がないことを思い知らされる。

さりとて、だからといって彼を、自分の手には負えないからと放って置けばいいともも考えない。それでは、宿角健剛すくすみけんごうを放逐し、健剛がどんな悪事を働いても、

『自分達には関係ない』

と見て見ぬフリをし続けてきた先祖達と同じになってしまうのだから。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

因果

あおみなみ
現代文学
人間関係は、人の数だけある(若干小泉進次郎構文)

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

突然覚醒した巫女の夏子が古代ユダヤのアーク探しに挑んだ五日間の物語~余命半年を宣告された嫁が…R《リターンズ》~

M‐赤井翼
現代文学
1年ぶりに復活の「余命半年を宣告された嫁が…」シリーズの第1弾!ニコニコ商店街・ニコニコポロレスのメンバーが再集結。稀世・三郎夫婦に3歳になったひまわりに直とまりあ。もちろん夏子&陽菜のコンビも健在。復帰第1弾の今作の主人公は「夏子」?淡路島イザナギ神社で知り合ったイケメン大使館員の「MK」も加わり10人の旅が始まる。ホテルの庭で偶然拾った二つの「古代ユダヤ支族の紋章の入った指輪」をきっかけに、古来ユダヤの巫女と化した夏子は「部屋荒らし」、「ひったくり」そして「追跡」と謎の外人に追われる!古代ユダヤの支族が日本に持ち込んだとされる「ソロモンの秘宝」と「アーク(聖櫃)」に入れられた「三種の神器」の隠し場所を夏子のお告げと客観的歴史事実を基にアークの追跡が始まる。もちろん最後は「ドンパチ」の格闘戦!7月1日までの集中連載で毎日更新の一騎掲載!アークと夏子とMKの恋の行方をお時間のある人はゆるーく一緒に見守ってあげてください!では、感想やイラストをメール募集しながら連載スタートでーす!(⋈◍>◡<◍)。✧♡

朽ちる世界の明日から

大山 たろう
現代文学
その日、上原 弘樹は、寝坊をした。 いつもより遅い時間の電車に乗って、でも、いつもの学校。 けれど、いつもの学校は永久に失われてしまった。 偶然にも、『寝坊』したせいで生き残った彼と、偶然同じ電車に乗った彼女の、旅の話である。

せめく

月澄狸
現代文学
ひとりごと。

期末テストで一番になれなかったら死ぬ

村井なお
青春
努力の意味を見失った少女。ひたむきに生きる病弱な少年。 二人はその言葉に一生懸命だった。 鶴崎舞夕は高校二年生である。 昔の彼女は成績優秀だった。 鹿島怜央は高校二年生である。 彼は成績優秀である。 夏も近いある日、舞夕は鹿島と出会う。 そして彼女は彼に惹かれていく。 彼の口にした一言が、どうしても忘れられなくて。

【第2話完結!】『2次元の彼R《リターンズ》~天才理系女子(りけじょ)「里景如志(さとかげ・しし)のAI恋愛事情~』

あらお☆ひろ
現代文学
はじめまして。「あらお☆ひろ」です。 アルファポリスでのデビューになります。 一応、赤井翼先生の「弟子」です!公認です(笑)! 今作は赤井先生に作ってらった「プロット」と「セリフ入りチャプター」を元に執筆させてもらってます。 主人公は「グリグリメガネ」で男っ気の無い22歳の帰国子女で「コンピュータ専門学校」の「プログラミング講師」の女の子「里景如志(さとかげ・しし)」ちゃんです。 思いっきり「りけじょ」な如志ちゃんは、20歳で失恋を経験した後、「2次元」に逃げ込んだ女の子なんですが「ひょんなこと」で手に入れた「スーパーコンピュータ」との出会いで、人生が大きく変わります。 「生成AI」や「GPT」を取り上げているので「専門用語」もバシバシ出てきますが、そこは読み逃がしてもらっても大丈夫なように赤井先生がストーリーは作ってくれてます。 主人公の如志ちゃんの周りには「イケメン」くんも出てきます。 「2次元」VS「リアル」の対決もあります。 「H」なシーンは「風呂上がり」のシーンくらいです(笑)。 あと、赤井先生も良く書きますが「ラストはハッピーエンド」です! ラスト前で大変な目に遭いますが、そこはで安心して読んでくださいね! 皆さんからの「ご意見」、「ご感想」お待ちしています!(あまり厳しいことは書かないでくださいね!ガラスのメンタルなもんで(笑)。) では、「2次元の彼~」始まりまーす! (⋈◍>◡<◍)。✧♡ (追伸、前半の挿絵は赤井翼先生に作ってもらいました。そこまでAI作画の「腕」が上がりませんでした(笑)。)

姉妹の愚痴〜心身障害者への理解を〜

刹那玻璃
現代文学
人間関係、親族関係、金銭トラブル、借金の肩代わりで人生も精神も崩壊、心の病に苦しむ私は、体も弱る。 無理はやめてほしいと祈っていた妹も疲れ果て、心療内科に通うことになる。 完璧主義で、人に仕事を押し付けられ、嫌と言えない性格だったのでそのまま地獄にまっしぐら……。 泣きながら私は日々を過ごす。

処理中です...