239 / 283
回帰
うろたえる必要が
しおりを挟む
もえぎ園で働くということは、単に、
『救われない子供を救う』
とか、
『虐げられてきた子供を癒してあげる』
とか、上から目線の綺麗事で自己満足を得るのが目的ではない。むしろ、自らの過去と改めて向き合い、どうすれば目の前にいる子供達が、将来、自分と同じように自らの過去と向き合えるようになるのかを延々と考え続ける、
<修練>
もしくは、
<自己鍛錬>
の場であると言えるだろう。
<仕事>という以上に、修練や自己鍛錬の場という認識なので、子供達が自分の思い通りになってくれなくても、
『やってられない』
などと思う必要がない。
もえぎ園出身の職員達は、多くが虐待や育児放棄の元被害者なので、心に様々な<痛み>や<闇>を抱えている。
世間を恨み、社会を恨み、人間を憎んできた経験を積んできた者達だ。
そんな彼ら彼女らが社会と折り合いをつけて生きるのは、生半可なことではない。何か苦しいことがあるたびに、上手くいかないことがあるたびに、世間の所為、社会の所為、他人の所為にして何もかもを破壊してしまいたいという願望に駆られることも、たとえ<大人>と呼ばれる年齢になり、虐待や育児放棄を受けていた頃が悠か過去のことになったとしても完全に消え去ってしまうことはない。
無責任な他人は、
『そんな昔のことをいつまでも引きずるとかwwwww』
などと嘲ったりもするが、そうやって他人を嘲るようなお前は何なのだ? 人としてまっとうな神経を持っているのか? という話だろう。
気遣いや思い遣りを持っている人間は、他人を嘲ったりはしない。
自分にとって都合のいい相手しか気遣えない、思い遣れない人間は、ただ上辺を繕っているだけの人間だ。
決して<いい人>でも<立派な人>でもない。ちょっと気に入らないことがあるだけで手の平を返す、信用も信頼もできない上っ面だけの人間だ。
大人を信用していない、他人を信用していない子供は、<試し行動>によって相手の本質を探ろうとする。上辺を取り繕っているだけの人間の化けの皮をはがし、その本質を探ろうとする。
かつて自分がやってきたことを、やらずにいられなかったことを、今、灯安良はやらずにいられないのだということを、もえぎ園の職員は知っている。
そんな彼女と向き合うことで、幼かった頃の自分と向き合い、自分の<痛み>や<闇>と向き合う。自分自身を客観的に見る。
自身の苦しかった過去に甘えてしまいそうになる己を戒める。
その為にやっていることなので、子供達の<試し行動>にうろたえる必要がないのである。
『救われない子供を救う』
とか、
『虐げられてきた子供を癒してあげる』
とか、上から目線の綺麗事で自己満足を得るのが目的ではない。むしろ、自らの過去と改めて向き合い、どうすれば目の前にいる子供達が、将来、自分と同じように自らの過去と向き合えるようになるのかを延々と考え続ける、
<修練>
もしくは、
<自己鍛錬>
の場であると言えるだろう。
<仕事>という以上に、修練や自己鍛錬の場という認識なので、子供達が自分の思い通りになってくれなくても、
『やってられない』
などと思う必要がない。
もえぎ園出身の職員達は、多くが虐待や育児放棄の元被害者なので、心に様々な<痛み>や<闇>を抱えている。
世間を恨み、社会を恨み、人間を憎んできた経験を積んできた者達だ。
そんな彼ら彼女らが社会と折り合いをつけて生きるのは、生半可なことではない。何か苦しいことがあるたびに、上手くいかないことがあるたびに、世間の所為、社会の所為、他人の所為にして何もかもを破壊してしまいたいという願望に駆られることも、たとえ<大人>と呼ばれる年齢になり、虐待や育児放棄を受けていた頃が悠か過去のことになったとしても完全に消え去ってしまうことはない。
無責任な他人は、
『そんな昔のことをいつまでも引きずるとかwwwww』
などと嘲ったりもするが、そうやって他人を嘲るようなお前は何なのだ? 人としてまっとうな神経を持っているのか? という話だろう。
気遣いや思い遣りを持っている人間は、他人を嘲ったりはしない。
自分にとって都合のいい相手しか気遣えない、思い遣れない人間は、ただ上辺を繕っているだけの人間だ。
決して<いい人>でも<立派な人>でもない。ちょっと気に入らないことがあるだけで手の平を返す、信用も信頼もできない上っ面だけの人間だ。
大人を信用していない、他人を信用していない子供は、<試し行動>によって相手の本質を探ろうとする。上辺を取り繕っているだけの人間の化けの皮をはがし、その本質を探ろうとする。
かつて自分がやってきたことを、やらずにいられなかったことを、今、灯安良はやらずにいられないのだということを、もえぎ園の職員は知っている。
そんな彼女と向き合うことで、幼かった頃の自分と向き合い、自分の<痛み>や<闇>と向き合う。自分自身を客観的に見る。
自身の苦しかった過去に甘えてしまいそうになる己を戒める。
その為にやっていることなので、子供達の<試し行動>にうろたえる必要がないのである。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
走れない僕らは 違って同じだ
有箱
現代文学
俺の小学校では、徒競走が盛んだ。それゆえに足の速いやつ、イコール人気との図ができあがっていた。 なのに万年マラソン最下位の俺は、クラス中から仲間外れにされ、辛い日々を送っている。 だが、俺は言いたい。俺が最下位じゃないーーかもしれないと。なぜなら俺のクラスには病気でそもそも走らない奴がいるからだ。 俺はそいつが嫌いだった。なのに、そいつは構わず俺に話しかけてきて。
世の中色々な人がいる、ということに時々疲れる。
月澄狸
エッセイ・ノンフィクション
世の中色々な人がいる。ハッピーな時に聞いたら素敵な言葉だ。まだ見ぬ世界が広がっていて、これから色んな人に出会う可能性があるのだから。
でも色々な人がいるということは、色々考慮しないといけないわけで。善なのか悪なのか判断のつかないこともある。世界に善も悪もないけれど。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
星降る夜の、空の下
高嶺 蒼
ライト文芸
高校卒業から10年目の同窓会。
見知らぬ美女が現れてざわめく会場。
ただ1人、主人公だけはその美女が誰か気が付いて、驚きに目を見開く。
果たしてその美女の正体とは……?
monogataryというサイトにて、「それ、それずーっと言って欲しかったの
」というお題で書いた短編です。
マイ•ダイアリー『書かれていることが実際に起こる日記』
鼻血の親分
現代文学
職場のモラハラに苦しみ、退職を決意した高野真由美はアパートの一室で謎の日記を手に入れた。日記に名前を書くと、未来のできごとが記され、実際に起こる現象に驚いたが、それを利用して日々のストレスを回避しながら仕事を続けることにした。やがて、日記の関係者や過去の持ち主が分かり、真由美は自身の問題解決と持ち主の無念を晴らすために行動を起こす。そして──
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる