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本人の様子を見て
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『自分はこいつらとは違う』
これは、犯罪を起こす人間に、非常に高い確率で見られる思考形態だと思われる。何度同じようなことで逮捕され罪に問われる人間が現れそれがニュースとして報道されても、
『自分だけは大丈夫』
『自分だけは上手くいく』
『自分だけは許される』
『自分だけは例外』
などと考えて、犯罪に至るのだ。
子供を虐待する親も、イジメを行う輩も、泥棒も、性犯罪者も、殺人犯さえそんな風に考えて事に至ることが多いのだろう。
<見せしめ>が効果を発揮するのは、そもそも罪を犯す可能性が低い者相手に限られるのかもしれない。
『自分はこいつらとは違う』
『自分だけは大丈夫』
そんな風に考える人間は、どれほど厳しい罰が科されると分かっていても、
『自分だけはそれを免れる』
と考えてしまうのだろうから。
罪が発覚することを恐れつつも、心のどこかでは『きっと大丈夫』と思うからこそできてしまうのだろう。
子供を虐待する親も、イジメを行う輩も、自身を正当化して、
『自分は正しいことをしている』
と思い込む。思い込めてしまう。だから、同じようなことをしている人間が罰せられても、
『自分だけは大丈夫』
などと思い上がれるのではないだろうか。
しかし現実はそうではない。
虐待を<躾>と、
暴行、傷害、強要、脅迫、窃盗、器物損壊を<ただの悪ふざけ>と、<イジメ>と言い換えようとも、犯罪が犯罪である事実は変わらない。
それをもえぎ園の出身者は誰もが知っている。それを教わる。だから自分を律することができる。
もし自分で自分を律することが難しいと感じるような事態に至れば、躊躇うことなく助けを求める。それができる場所であり続けようと努力する。
「ふう…ふう……」
いよいよ臨月に入り、日課のウォーキングも辛くなってきた。僅か数分歩いただけで汗がだらだらと滴ってくる。運動による汗と言うよりは、苦痛による汗と言った方がいいかもしれない。
「灯安良、大丈夫?」
一緒にウォーキングをしていた阿礼が尋ねてくる。
「……無理……」
灯安良が手すりに掴まってそれだけを口にした。その様子に、阿礼は部屋を出て職員に、
「灯安良が辛そうなんです。今日はもうウィーキングはやめといた方がいいですか?」
と尋ねるとその職員は灯安良の部屋を訪れ、だらだらと脂汗を流してマシンの手すりに掴まっている彼女を見るなり、
「そうね。取り敢えず今は休んで。楽になってまたできそうならすればいいけど、無理はしないでね」
と指示した。
とにかく決められた日課だからと強引にやらせるのではなく、きちんと本人の様子を見て判断する。
こういう些細な積み重ねが大事なのだと、実際にやってみせることで教えるのだった。
これは、犯罪を起こす人間に、非常に高い確率で見られる思考形態だと思われる。何度同じようなことで逮捕され罪に問われる人間が現れそれがニュースとして報道されても、
『自分だけは大丈夫』
『自分だけは上手くいく』
『自分だけは許される』
『自分だけは例外』
などと考えて、犯罪に至るのだ。
子供を虐待する親も、イジメを行う輩も、泥棒も、性犯罪者も、殺人犯さえそんな風に考えて事に至ることが多いのだろう。
<見せしめ>が効果を発揮するのは、そもそも罪を犯す可能性が低い者相手に限られるのかもしれない。
『自分はこいつらとは違う』
『自分だけは大丈夫』
そんな風に考える人間は、どれほど厳しい罰が科されると分かっていても、
『自分だけはそれを免れる』
と考えてしまうのだろうから。
罪が発覚することを恐れつつも、心のどこかでは『きっと大丈夫』と思うからこそできてしまうのだろう。
子供を虐待する親も、イジメを行う輩も、自身を正当化して、
『自分は正しいことをしている』
と思い込む。思い込めてしまう。だから、同じようなことをしている人間が罰せられても、
『自分だけは大丈夫』
などと思い上がれるのではないだろうか。
しかし現実はそうではない。
虐待を<躾>と、
暴行、傷害、強要、脅迫、窃盗、器物損壊を<ただの悪ふざけ>と、<イジメ>と言い換えようとも、犯罪が犯罪である事実は変わらない。
それをもえぎ園の出身者は誰もが知っている。それを教わる。だから自分を律することができる。
もし自分で自分を律することが難しいと感じるような事態に至れば、躊躇うことなく助けを求める。それができる場所であり続けようと努力する。
「ふう…ふう……」
いよいよ臨月に入り、日課のウォーキングも辛くなってきた。僅か数分歩いただけで汗がだらだらと滴ってくる。運動による汗と言うよりは、苦痛による汗と言った方がいいかもしれない。
「灯安良、大丈夫?」
一緒にウォーキングをしていた阿礼が尋ねてくる。
「……無理……」
灯安良が手すりに掴まってそれだけを口にした。その様子に、阿礼は部屋を出て職員に、
「灯安良が辛そうなんです。今日はもうウィーキングはやめといた方がいいですか?」
と尋ねるとその職員は灯安良の部屋を訪れ、だらだらと脂汗を流してマシンの手すりに掴まっている彼女を見るなり、
「そうね。取り敢えず今は休んで。楽になってまたできそうならすればいいけど、無理はしないでね」
と指示した。
とにかく決められた日課だからと強引にやらせるのではなく、きちんと本人の様子を見て判断する。
こういう些細な積み重ねが大事なのだと、実際にやってみせることで教えるのだった。
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