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日常

手紙

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昼前。郵便配達のバイクが来た気配に、宿角蓮華すくすみれんげはあまりの退屈さに不貞腐れるようにソファーにうずもれていた体を起こし、園宛に届いた郵便物を手に取った。

その一通が、差出人のないものだったことで、開封はせずに脇へと置いた。

それから電話を掛けると、

「あ~、また不審な郵便が届いてる。そっちで対処お願い」

と、電話の相手に告げた。

「了解。すぐに回収に向かわせます」

電話の相手は、もえぎ園の顧問弁護士である一条開耶いちじょうさくやだった。

一条開耶は、獅子倉勇雄ししくらいさおと同じくもえぎ園出身の弁護士である。

顧問弁護士として特定の相手からの依頼を受けるのではなくあくまでフリーとして仕事をしている獅子倉に対し、一条はもえぎ園をはじめとしたいくつかの企業・団体の顧問弁護士として仕事をしている形だった。

そして、電話をしてから三十分ほどして蓮華の自宅を訪ねたのは、ガードマン風の制服に身を包んだ男だった。

「ご苦労様。じゃあこれ、頼むわね」

そう言って蓮華が差し出した郵便物を、男は手袋をした手で受け取り、すぐにジュラルミンのケースへと仕舞った。

「では、お預かりします」

男は丁寧にそう応えてすぐに、同じ制服に身を包んだ男が運転席に座る、<大貫警備保障>と書かれた自動車に乗りこんで走り去った。



蓮華から郵便物を受け取った男が自動車で向かった先は、自動車に書かれたのと同じく<大貫警備保障>と看板が掲げられた倉庫だった。

男達はそこで自動車を停め、手紙が入ったジュラルミンのケースを台車に乗せて倉庫へと入っていく。

すると中には、透明な壁に囲まれた小部屋があった。その中にジュラルミンのケースを乗せた台車ごと置くと、小部屋に接するように置かれた椅子に別の男が座り、透明な壁に備え付けられた器械のようなものを操作し始めた。

それは、マジックハンドだった。複雑な動きはするもののそれは電気的に制御されたものではなく、あくまで人力だけで操作するものだ。

そのマジックハンドを男は器用に操作し、ジュラルミンのケースの中に入れられた手紙を取り出し、マジックハンドの先に付けられた手術用のメスのような刃物で開封、中のものを取り出す。

「ただの手紙だな。危険はなさそうだ」

封筒の中に入っていた便箋を開くと、それは細かい文字がびっしりと印刷された手紙だった。

『殺す』の文字が延々と羅列されただけの手紙だ。

すると、いつの間にか、小部屋を覗き込むようにして、シュッとした印象のスーツ姿の男がその様子を見ていた。

もえぎ園顧問弁護士の一条開耶であった。

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