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灯安良と阿礼

自分の子供は犬以下だ!

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何度も言うが、ルールやマナーを完璧に守れないのが問題なのではない。そうやってルールやマナーを自分勝手に捻じ曲げておきながらそれを正当化し、あまつさえ棚に上げて、

『親の言うことを聞いておけばいい』

と振る舞い、それを子供に見透かされるから、反発も受けるし信頼も尊敬もしてもらえないのではないのか?。

思い返してみればいい。自分が誰かから注意されたり間違いを指摘された時、それをしてきた相手の<粗>を探したりはしないだろうか?。些細な言葉尻を捉えて、

『お前が言うな!』

的に言い返したりしないだろうか?。それは結局、相手が自身を棚に上げて偉そうなことを言って来たら素直に聞く気になれないという何よりの証拠でないのか?

たとえ親子の間であってもそういうものではないだろうか?

加えて、親子の場合は特に、そうして反発しながらも、

『親がルールとかマナーとか無視してるんだから自分も』

と、親のいい加減な部分を見倣ってしまったりしないだろうか?

宿角蓮華すくすみれんげは言う。

「たとえ犬でもね、人間の方がきちんと適切な対応をしたら問題を起こさないのよ。分かる? 人間の社会の中で生きてる犬が問題行動を起こすのは、ほぼ百パーセント、人間の側の対応が適切じゃないからよ。

犬でさえそれなんだから、人間の子供が問題行動を起こすのなんて、百パーセント、親かごく身近な人間の対応が適切じゃなかったからでしょうが。

それとも何? 世の親共は、

『自分の子供は犬以下だ!』

とでも言うつもり?

しかも、生まれつきの問題だとか遺伝子の所為だとか言うのなら、それこそあんた達の遺伝子が犬以下だって言ってるのと同じでしょうが!」

と。

そして、そんな宿角蓮華に、

『お前が言うな!!』

と反発するなら、それこそ、

『相手の粗を探し出してでも反発する』

という何よりの証拠だろう。

宿角蓮華は、それを十分承知した上で、その事実を突き付けるために敢えて尊大に振る舞っているというのもある。彼女を相手に感情的になった時点で、術中に嵌っているのである。



わざわざ東北にまで逃げて児童相談所に保護してもらおうとした灯安良てぃあら阿礼あれいの目論見は、所詮、子供の浅知恵でしかなかった。

ネット上の、児童相談所や警察を<無能の集まり>と罵る書き込みを真に受けてきたものの、現実はそんなに甘くはなかったのだ。

適切に丁寧に対処するところはそうやってネット上で叩かれることがない。一部のマズい対応が表に出たことで叩かれるだけだ。

スマホの小さな画面から見えるものは、所詮、現実の一部分を切り取っただけでしかない。

灯安良てぃあら阿礼あれいもそれを、周囲の大人達から教わってこなかったのだった。

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