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斉藤敬三
当然の復讐
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「昔は復讐や敵討が認められてたとか言う奴らがいるが、それが認められてた時だって、何でもかんでも認められてた訳じゃねえ。それはそれで厳しい決まり事があって、その決まり事に反すれば、復讐しようとした側が死罪になることだってあったっていうじゃねえか。
昔は良かったって話にしたがる奴はとにかくそういう部分を見やがらねえ。
それにお前も散々見てきてる筈だ。被害者がいつだって可哀想なだけじゃないってのを。
つい先日もあっただろ? 自分の女房の葬式の最中に娘に包丁で刺された可哀想な父親だと思われてた奴が、その娘が十歳の時から売春を強要してきたロクでもねえ野郎だったってえ事件が」
「ああ、ありましたね。あれは嫌な事件でした。娘がやらされてきたことがあんまりにも酷くて表沙汰にしにくいっていうんでマスコミも大々的に触れずにいたら、世間じゃ<育ててもらった恩を忘れたロクでもない娘>って評価の方が定着しちゃって…」
「そうだな。だが、当の娘は自分のやったことを<当然の復讐>ということで無罪主張するかと思えば、自分の罪をすべて認めて処罰されることを望んだ。まったく、大した覚悟だよ。どうやら今は家族に恵まれて幸せにしてるらしいが、それがあればこその覚悟だったんだろうな」
「あの事件は僕たちの担当じゃなかったのに、詳しいですね」
「まあな。知り合いの探偵や弁護士が実はその娘の為に動いててよ。俺も少しばかり協力したからな」
「またですか。大丈夫なんですか? 守秘義務とか」
「心配ねえよ。喋っちゃいけねえことは喋ってねえ。それに、その辺りを疑われるくらいは俺も覚悟の上だ。しかもあいつらは、俺にとっても貴重な情報源でもあるからな。持ちつ持たれつってやつだよ」
「そういうもんなんですか?」
「そういうもんだ。だがこれも、『そうするのが当たり前』と思っちゃいけねえから気を付けることだ。ルール的にグレーな部分だからな。それをわきまえねえと、いよいよ道を踏み外す。
世の中、ガッチガチにルールだけを守ってりゃ何もかもうまくいく訳じゃねえのも確かだ。法律じゃ守れねえ命だってある。けどな、もし、ルールや法に背いてでも命を救おうとするなら、それが本当にどうしても必要なことだったのか、他に方法がなかったのか、それについて徹底的に調べられることも覚悟しなきゃいけねえ。それこそ、拳銃使用以上に徹底的に厳しくな。
その時になって泣き言を並べるような奴は大人しくルールや法律を守ってることだ」
昔は良かったって話にしたがる奴はとにかくそういう部分を見やがらねえ。
それにお前も散々見てきてる筈だ。被害者がいつだって可哀想なだけじゃないってのを。
つい先日もあっただろ? 自分の女房の葬式の最中に娘に包丁で刺された可哀想な父親だと思われてた奴が、その娘が十歳の時から売春を強要してきたロクでもねえ野郎だったってえ事件が」
「ああ、ありましたね。あれは嫌な事件でした。娘がやらされてきたことがあんまりにも酷くて表沙汰にしにくいっていうんでマスコミも大々的に触れずにいたら、世間じゃ<育ててもらった恩を忘れたロクでもない娘>って評価の方が定着しちゃって…」
「そうだな。だが、当の娘は自分のやったことを<当然の復讐>ということで無罪主張するかと思えば、自分の罪をすべて認めて処罰されることを望んだ。まったく、大した覚悟だよ。どうやら今は家族に恵まれて幸せにしてるらしいが、それがあればこその覚悟だったんだろうな」
「あの事件は僕たちの担当じゃなかったのに、詳しいですね」
「まあな。知り合いの探偵や弁護士が実はその娘の為に動いててよ。俺も少しばかり協力したからな」
「またですか。大丈夫なんですか? 守秘義務とか」
「心配ねえよ。喋っちゃいけねえことは喋ってねえ。それに、その辺りを疑われるくらいは俺も覚悟の上だ。しかもあいつらは、俺にとっても貴重な情報源でもあるからな。持ちつ持たれつってやつだよ」
「そういうもんなんですか?」
「そういうもんだ。だがこれも、『そうするのが当たり前』と思っちゃいけねえから気を付けることだ。ルール的にグレーな部分だからな。それをわきまえねえと、いよいよ道を踏み外す。
世の中、ガッチガチにルールだけを守ってりゃ何もかもうまくいく訳じゃねえのも確かだ。法律じゃ守れねえ命だってある。けどな、もし、ルールや法に背いてでも命を救おうとするなら、それが本当にどうしても必要なことだったのか、他に方法がなかったのか、それについて徹底的に調べられることも覚悟しなきゃいけねえ。それこそ、拳銃使用以上に徹底的に厳しくな。
その時になって泣き言を並べるような奴は大人しくルールや法律を守ってることだ」
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