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辻堂緋翔

現認

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ゴルフボールよりもやや大きいくらいの石が後頭部に当たり、女は「ギッ!?」とまるで虫のような声を上げて頭を押さえつつその場にうずくまった。

その様子に何事かと辻堂寧人つじどうていとは一瞬困惑したが、地面を転がる石に気付き、さらには少し離れたところのベンチの前で男が何かを投げ終わった姿勢のまま立っていたのを見て察してしまった。こいつが石を投げつけたのだと。

「な、なにすんじゃわりゃあっっ!!」

もういかにもな怒声を上げつつ、辻堂寧人は石を投げつけたと思しき男に向かって大股でガシガシと迫っていった。拳を握り締め、一撃を食らわす気満々である。

それに対して石を投げつけた男、杓条甲真しゃくじょうこうまも臨戦体勢を整えていた。と言っても酔っぱらっているので微妙に体が揺れているが。

そんな杓条の右頬に、ガツンという衝撃があった。辻堂の拳がぶつかったのだ。手で払い除けるつもりが酔っていたことで反応が遅れてしまったのだろう。

「ガッ!」

と声を上げつつ、辻堂に比べれば明らかに頼りない痩せっぽちの杓条の体が地面へと崩れ落ちる。

「なんじゃわりゃぁ、なにしてくれてんじゃ、おおっ!?」

怒声を上げつつ、辻堂は地面に倒れた杓条の腹を容赦なく蹴りつけた。続けて二発三発と蹴りを繰り出す。頭に血が上って手加減ができていない。下手をすると内臓が破裂して死に至る危険性さえある行為だった。

「げぼっ!」

と声とも言えない音を発しながら杓条が腹の中のものをぶちまけた。綺麗に胃に蹴りが入った証拠だった。

『やべぇ…死ぬ…!?』

杓条の頭にそんな考えがよぎる。それほどの衝撃だった。腹の辺りで爆弾でも破裂したかのような。

だがその時、「やめろ!!」という、杓条でも辻堂でもない人間の一喝がその場に響いた。斉藤敬三さいとうけいぞうだった。そのすぐ後ろに若い刑事も付いてくる。

「くそっ!、警察サツか!?」

躊躇なく自分の方へと走ってくるいかつい風体のスーツ姿の中年男を見た瞬間、辻堂は察してしまった。そして身を翻し、まだうずくまっている女も放って公園の出口へと走った。

が、公園を出ようと踏み出した脚が何かに引っかかり、辻堂の体が派手につんのめってアスファルトに顔から倒れ込んだ。咄嗟に手を出して支えようとしたが勢いを抑えきれなかったのだろう。

「が…あっ…!」

呻きながら体を起こそうとした辻堂の腕をとり、何者かがそれを背中に回して極めた。辻堂の先回りをしていた戸野上探偵事務所の探偵だった。

こうして、辻堂寧人は杓条甲真に対する、杓条甲真は辻堂が連れていた女に対する暴行の現行犯で緊急逮捕されたのだった。

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