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もえぎ園

罪と罰

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宿角蓮華すくすみれんげは、守縫久人かみぬいひさとをイジメてた当該生徒の家庭に弁護士を派遣し、

「今後は施設の方で守縫久人かみぬいひさとを保護しますので、もし彼に何らかの危害を加えるようであれば刑事告訴を含め法的措置を取ることになると承知しておいていただきます。

また、本日この時点より、守縫久人かみぬいひさとに対する一切の言動、電話、メール、メッセージ、ネット上の書き込みすべてを証拠保全しますので、合わせて承知しておいていただきます」

と告げさせた。

その後でそのイジメ加害者の家庭で何が起こるのかは原則として関知はしない。ただ、もし子供がイジメをしていたことを理由に過剰な折檻をするようならそれについてはまた<別件>として対処するだけである。

宿角蓮華は、暴力に対しては容赦をしない。『イジメ加害者なら殴ってもいい』という理屈を認めない。法に基づいて断罪することはあっても、私刑は認めない。

彼女は言う。

「イジメ加害者を体罰で罰すればいいとかいうのは、私に言わせれば寝言もいいところよ。だって冷静に考えてみなさい? 本来、少年院送致もありえるような犯罪行為を、一発殴っただけで無罪放免にするって言ってるのと同じなのよ? 大人しく殴られておいたらすべての罪を帳消しにしてやるって言ってるのと同じなのよ?

おかしいでしょ。

体罰はね、<罰>なんかじゃないの。あれはむしろ<甘やかし>。親や教師に殴られておいたらどんな罪も見逃してもらえるって話なの。私はそんなものは認めない。たとえ子供であっても法によって裁かれなきゃいけない時はあるの。『<子供の悪戯>、<子供同士のじゃれ合い>、<子供同士の喧嘩>。だから一発殴ってはいお終い』。じゃ済まされないこともあるのよ。

この<もえぎ園>内では、いかなる事例についても体罰で済ますことはしない。もしそれが刑事罰相当の行為であれば警察にだって突き出す。お説教で済む間に改まらないのならね。

まあもっとも、そんなことしなきゃならないくらいに精神的に追い詰められてるのを何の対処もせずに放っておいたりはしないから、そんなことはまずないけど。

他の子を叩けばその時点でそれがよくないことだと理解するまで諭す。何度でも諭す。『言っても分からない』じゃなくて、『分かるまで言う』。子供との根競べで負けるようなヤワいのはうちの職員には要らないのよ。キレて手を出す奴なんて即刻警察に突き出してやるわ。そのことは採用する時点で念押ししてるからね。

でも、今の職員は殆どここの出身者だからね。要領はよく分かってくれてるから助かってる」

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