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「う……」

僕が傷を癒してやると、娘が息を吹き返した。

「おい、しっかりしろ。傷はもう大丈夫だ」

僕の声に、娘がハッと体を起こす。そして僕を見るなり、

「剣が……! 兄さんの剣が……!」

縋りついて声を上げた。

「カブリの形見の剣か?」

問い掛ける僕に、

「男が押し入ってきて、兄さんの剣を持って行ってしまったんです……!」

娘は泣きそうな顔で訴えかけた。

なるほど。ご立派な剣を持ってるのに目を付けた<剽賊ひょうぞく>共の格好の餌食となってしまったか。

こういう意味でも、あれは、今のこいつらには過ぎた<お荷物>だったんだ。身の丈に合った安物の剣であればこんなことにはならなかったかもしれんというのに。

とは言え、命を賭してまで自分達を守ろうとしてくれた兄の<形見>ともなれば、思い切るにもそれなりに時間が要るか。そうして思い切るために心の準備をしていたところに間が悪く<剽賊ひょうぞく>共が先に動いたと。

言ってしまえば『身から出た錆』ではあるものの、それでも悪いのは他人の物を奪う<剽賊ひょうぞく>の方だ。それは揺るがない。

ならば、乗り掛かった舟だ。

「お前は家で休んでいろ。私に任せてくれればいい」

そう言って娘を家に戻らせて、僕は家の中の匂いを嗅ぎ、外に出た。

地に同じ匂いが点々と続いている。一つはミブリのものだが、新しい<複数の男の匂い>もある。

だから僕はその匂いを追った。

時間はせいぜい半時ほどしか経ってない。そんなに遠くへは行っていないだろう。

と、僕が睨み付けた先に、三人の男の姿。男達は剣をかざしてニヤニヤと笑っている。獲物の品定めをして、それを金に換える皮算用でもしているんだろう。

だが、そのニヤケ面がまた僕の逆鱗に触れてしまう。

僕は、人間なら千歩は歩かないといけないところを一歩で跳び、剣を握っていた男の顔に拳を叩きつけてやった。

娘の胸の骨を折りそれが肺腑に刺さるくらいの真似をしたのだから、逆に自分が返り討ちに遭うぐらいの覚悟はしていたはずだよなあ!?

男の頬の骨がぐしゃりと潰れる感触が伝わってくる。で、そいつはそのまま地に倒れ伏した。この程度で気を失うか。

そして僕は、突然のことに呆気に取られている残る二人の男についても、一人は握った手の甲を鼻っ柱に叩きつけ、もう一人も左足を跳ね上げて顎を蹴り上げてやった。

着物の裾がまくれあがって中まで陽の光が当たったのが分かったが、どうせ誰も見ちゃいない。男も、それが見える前に気を失っている。

『剣を返せ』と押し問答をするのすら面倒だったから手っ取り早く済ませた。人間共の法度には触れるかもしれんが、僕は竜神だ。そんなもの関係ない。

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