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己の憎しみを正当なものにするために

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僕が察したことを、ご丁寧にもミブリが説明してくれた。

「カブリは……兄貴は……俺達を養うために働いて働いて、死ぬほど働いて、それで死んだ……『味噌をくれたあの人にも恩を返さないといけないからな』とか言って……

だから、竜神、てめぇが日照りなんか起こさなきゃ、イブリも兄貴も死なずに済んだんだ……!」

なるほど。そういうことか。だがこいつ、恨みに目が眩んで無茶苦茶だな。カブリが言ってたという<味噌をくれたあの人>が目の前にいることにも気付いてない。

まあ、あの時、小屋にいた奴らはそれこそ獣のようなのばっかりだったからな。それから人間としての心を取り戻したとしても、まともに覚えてもいないか。

だから言ってやったんだ。

「その、カブリが言っていたという<味噌をくれたあの人>は、こんな顔をしていなかったか?」

一歩近付いて、さらに顔がよく見えるようにして。

祠があるせいで外の光はあまり届かないが、目が慣れれば人間でも分かる程度の明るさはある。

で、

「―――――っっ!?」

ようやく、ミブリも気付いたようだ。あの時の女が自分の目の前にいることに。

なのに、こいつは、<恩人>だと考えを改めるどころか、

「てんめぇ……っっ!!」

ますます憎悪を燃え上がらせる始末。

「てめぇ! よくも抜け抜けと……! てめぇで日照りを起こしておいて俺達を苦しめておいて、その上でちっとばかりの施しを授けるとか……てめぇはどこまで俺達人間をいたぶるつもりだ……っ!?」

とかな。

やれやれ。己の憎しみを正当なものにするためにそう解釈するか。実に面倒臭い。本当に面倒臭い。

こうなると人間は聞く耳など持たない。

だから僕は、

「御託はいいから、掛かってこい。今の貴様に何を言っても無駄のようだ」

冷たく言い放ってやった。

「!!」

と、弾かれるようにミブリが剣を振りかざし奔る。

ほう? 小僧のクセに筋は悪くない。その一瞬の動きだけで、この後もまっとうに鍛え上げればザンカ程度の強さには至れるであろうことが僕には分かった。

でも、それだけだ。

たとえ本当にザンカと同じ程度には強くなれても、僕には届かない。<人間の範疇>では、一匹の蟻がししを倒そうとするよりも有り得ない。

それをわきまえないから駄目なんだ。お前達人間は。

ミブリがまったく手加減なく己の渾身の力で叩きつけてきた剣を、僕は左手の指だけで摘まんで受け止めて見せた。

すると、剣が途中でいきなり止まってしまったことで手が滑り、しかも握りに右手の親指が引っかかったことで、

「ぎ……っ!?」

ミブリの口から悲鳴が漏れる。

右手の親指が外れたんだ。

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