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出て来い竜神!
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そうやってヒャクは分かってくれたというのに、<ミブリ>と名乗った奴は、
「出て来い竜神! 出て来い!!」
しつこく何度も声を上げながら祠の脇をくぐって奥へと入ってくる気配が伝わってきた。
どうやら今回の奴は簡単には引き下がってくれない種類の輩だったか。
「竜神様……」
明らかに声が近付いてくることにヒャクも気付いて、僕に縋りついてくる。
僕を煩わせただけでなくヒャクを怯えさせるとは、罪が重いぞ。
「ヒャクは家に入ってろ。僕が追い払ってくる」
「あ……あの、お気を付けて……」
心配そうに言う彼女に、
「人間ごときが僕に傷の一つでも付けられると思うか? 案じるな。それよりも奴が怪我をせんようにでも祈っておいてやれ」
頭を撫でながら言ってやった。
そうして僕は祠の方へと向かう。今はクレイの姿だ。
すると、
「うおっ!? なんだお前は!?」
洞の奥からいきなり現れた僕に、ミブリが飛び上がりそうなほど驚いて声を漏らした。
それに対して僕は、
「なんだとはなんだ。ここは我の棲み家だ。勝手に入り込んできたのは貴様だろうが」
と冷たく言い放つ。
そんな僕にミブリは、
「<棲み家>だと……? もしやお前が竜神か……!?」
体の奥でギリッと殺気をたわめ、憎悪を隠さない貌で言う。
ふん。どうやら『敵を討つために来た』というのは本気のようだ。
でも、手にしているのは大振りの剣一本。そんなもので何ができると言うのやら。
なのにミブリは、僕の姿をじっと睨み付けて、『ニヤリ』と不敵に微笑った。ただの人間の女にしか見えないそれに、自身の勝利を確信したんだろう。
見た目で相手を侮るとか、見た通りの<小僧>だな。
そう、小僧だ。せいぜい、十四か十五程度の。しかも、その顔には見覚えがある。
ヒャクリ亭から持ち帰った味噌の一つをくれてやった<カブリ>の弟妹の一人だ。間違いない。
しかし……
「貴様、我を<家族の仇>だと言ったな? それはイブリのことか?」
僕は疑問をそのまま口にした。が、その瞬間、ミブリの顔がさらにギュウッと歪む。およそ人間のそれとは思えないほどに。
「てめぇ……! よくもその名を……! やっぱりてめぇが竜神か……! 許さねぇ……! てめぇの所為でイブリもカブリも……!!」
ぐつぐつと煮えたぎったどす黒い怨念そのもののような言葉を絞り出し、ミブリの体がギリギリと軋む。もう今にも剣を振りかざして襲い掛かってきそうだ。
でも僕にとっては人間の憎悪など、ただの悪臭と変わらない。不快で鬱陶しいだけの<屁>のようなものだ。
ただ、ミブリの言葉で、カブリももうすでにこの世にいないことは察せられてしまったのだった。
『この恩は必ず返す』
とか言ってたクセに……
「出て来い竜神! 出て来い!!」
しつこく何度も声を上げながら祠の脇をくぐって奥へと入ってくる気配が伝わってきた。
どうやら今回の奴は簡単には引き下がってくれない種類の輩だったか。
「竜神様……」
明らかに声が近付いてくることにヒャクも気付いて、僕に縋りついてくる。
僕を煩わせただけでなくヒャクを怯えさせるとは、罪が重いぞ。
「ヒャクは家に入ってろ。僕が追い払ってくる」
「あ……あの、お気を付けて……」
心配そうに言う彼女に、
「人間ごときが僕に傷の一つでも付けられると思うか? 案じるな。それよりも奴が怪我をせんようにでも祈っておいてやれ」
頭を撫でながら言ってやった。
そうして僕は祠の方へと向かう。今はクレイの姿だ。
すると、
「うおっ!? なんだお前は!?」
洞の奥からいきなり現れた僕に、ミブリが飛び上がりそうなほど驚いて声を漏らした。
それに対して僕は、
「なんだとはなんだ。ここは我の棲み家だ。勝手に入り込んできたのは貴様だろうが」
と冷たく言い放つ。
そんな僕にミブリは、
「<棲み家>だと……? もしやお前が竜神か……!?」
体の奥でギリッと殺気をたわめ、憎悪を隠さない貌で言う。
ふん。どうやら『敵を討つために来た』というのは本気のようだ。
でも、手にしているのは大振りの剣一本。そんなもので何ができると言うのやら。
なのにミブリは、僕の姿をじっと睨み付けて、『ニヤリ』と不敵に微笑った。ただの人間の女にしか見えないそれに、自身の勝利を確信したんだろう。
見た目で相手を侮るとか、見た通りの<小僧>だな。
そう、小僧だ。せいぜい、十四か十五程度の。しかも、その顔には見覚えがある。
ヒャクリ亭から持ち帰った味噌の一つをくれてやった<カブリ>の弟妹の一人だ。間違いない。
しかし……
「貴様、我を<家族の仇>だと言ったな? それはイブリのことか?」
僕は疑問をそのまま口にした。が、その瞬間、ミブリの顔がさらにギュウッと歪む。およそ人間のそれとは思えないほどに。
「てめぇ……! よくもその名を……! やっぱりてめぇが竜神か……! 許さねぇ……! てめぇの所為でイブリもカブリも……!!」
ぐつぐつと煮えたぎったどす黒い怨念そのもののような言葉を絞り出し、ミブリの体がギリギリと軋む。もう今にも剣を振りかざして襲い掛かってきそうだ。
でも僕にとっては人間の憎悪など、ただの悪臭と変わらない。不快で鬱陶しいだけの<屁>のようなものだ。
ただ、ミブリの言葉で、カブリももうすでにこの世にいないことは察せられてしまったのだった。
『この恩は必ず返す』
とか言ってたクセに……
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