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いかにも人間らしい……

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『おとなしいフリをして<弱々しい自分>ってのを演じて他人の同情を引いてお情けにあやかろう』

こういう行いを、本当に人間は嫌うよな。

でも、僕の目から見れば、ミズモだけじゃなく、ほとんどの人間は大なり小なりそんな感じだぞ?

人間同士ではいきがっていても、自分より圧倒的に強い相手の前では謙って同情を引こうとする。

<ますらお>や<もののふ>と呼ばれていた連中でさえ、僕が竜神の姿で一声吠えてやれば糞も小便も垂れ流して命乞いしたしな。

だからミズモの振る舞いも、僕にとっては、

『いかにも人間らしい……』

という程度のものだった。

それでも他の生贄達は、こそこそしながらやけに厚かましいそれに苛立っていたりしてたから、僕が食事とかも与えてやった。

これも普通は、

『えこひいきしてる!』

などと言って嫌われるかもしれないが、ここでしばらく暮らすと、まともな奴ほど僕が変に構うことをせずに好きにさせていて、厄介な奴ほど僕が構うのが分かってくるから、僕に構われるというのはあまり誇らしいことじゃないというのが生贄達の感覚だった。

それで言うと、今、僕がヒャクをやたらと構っているように思えるかもしれない。けれどヒャクの場合は、他に力を合わせて生きていける生贄達がもういないとうのもあるからな。事情が違う。



ミズモの話に戻ると、彼女は、僕が作った飯を受け取って、

「ありがとう……ございます……」

一応、頭を下げたりもした。だけどミズモのそれは、ヒャクのとは違って、<感謝>じゃなく明らかに<下心>があってのものだった。そうやって謙ることで僕を縛るつもりなのが透けて見える。

だから僕は言ったんだ。

「頭を下げるな…! お前のそれは酷く癇に障る……!」

「は…はひっ……!」

ミズモは怯えたような顔で声を詰まらせた。だけどその様子すら、<演技>なのが分かる。それがこいつの<処世術>で、骨の髄まで染み付いてるんだ。だから、こいつ自身、自分が演じてるという自覚はないだろうな。

そこがまた本当に癇に障る。

ミズモの姿は、ヒャクに似ていて、でもまったく別のものだ。

ヒャクには自分の力で何とかしようという気概が根にある。でも、ミズモにはない。面倒なことは、たとえ自分にできることでも他人にやらせようとしてるんだ。

とはいえ、放っておくと他の生贄達にとっても不快なこいつの在り様は間違いなく諍いの原因になる。こいつを受け止められるだけの器は人間にはない。

そうだ。人間同士の面倒事すら自分では対処できずに揉めて、僕を不快にさせるんだ。

ミズモのようなのを作ったのも人間だ。それなのに自分達で作っておきながら相手をするのは面倒だと言って癇癪を起こす。

本当に鬱陶しい。人間という奴は。

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