52 / 100
人間の姿をした獣
しおりを挟む
<人間の姿をした獣>は、オルカとは違って、自分を我が子のように世話する女の方に懐いていった。
と言っても、初めのうちはそれこそ、
<獣と、その飼い主>
という様子そのものだったけどな。
『自分達の手に負えない者を僕に始末させるために生贄という体で寄越す』
から、こういうのもいる。まあ、ここまでのはさすがに珍しいけど。
僕は、敢えて自分からは構うことはせずに、好きにさせた。
でも、こういう奴らだから自分で食うものを用意はできないのもあって、それだけは僕が与える。
他の生贄も、野草や木の実を拾うくらいならできても、猪とかを捕らえるとなると難しいし、僕が捕らえて与えてた。
それを自分で料理したりして飯にするんだ。
<人間の姿をした獣>を我が子のように扱う女も、料理くらいは自分でできていたのが、時間が経つにつれ、壊れた頭が癒えてきたのか、野草や木の実を拾うのも自分でやるようになっていったな。
しかも、
「ホトリ、よしよし……」
<人間の姿をした獣>を<ホトリ>と呼ぶようにもなってた。
きっと、自分が生んだ子の名だったんだろう。
人間はこの女と<ホトリ>のようなのを、僕に始末させようとするくらいには毛嫌いするが、僕にとってみれば大して違わない。
他の生贄達も、女がホトリの世話をしている分には構うこともなかった。下手に構って面倒なことになるのも嫌だったようだ。
何より僕が二人を好きにさせていたから、それに異を唱えるのも憚られただろうしな。
ここでは、人間の里のように仕事をしなきゃ生きていけないわけでもない。
簡単に死なれたら嫌だから僕が食い物くらいは用意するし、それ以外は好きにすればよかっただけだ。
それでも、
『人間らしく生きたい』
という気持ちはあるらしいな。
いくつもの年月が過ぎても、ホトリは、自分を我が子のように扱うその女とずっと一緒にいた。ホトリ自身にとっても、親みたいなものになってた感じか。
それでも言葉までは話せず、時々、
「う~……」
とか、
「あ~……」
とか、唸るだけだった。
なのに、女には、
「おなかすいたのね」
「眠いのね」
みたいに声を掛けたりもする。女には分かるようだ。
さらに、ホトリは服は着ようとしないが、洞の中は火を焚いていれば冬でも暖かく、大丈夫だった。
女は、湯に浸した布で、ホトリの体を拭いてやってもいた。
その姿は、間違いなく幼子の世話をする母親のそれだった。
そうだ。いつの間にか、<獣と、その飼い主>という様子じゃなくなっていたんだ。
ホトリの体はすっかり大人のそれになっていても、振る舞いは何も変わらない。
だから女の方も、ずっと<我が子>を愛し続けられたんだろうな。
自分の下を巣立つこともない我が子を……
と言っても、初めのうちはそれこそ、
<獣と、その飼い主>
という様子そのものだったけどな。
『自分達の手に負えない者を僕に始末させるために生贄という体で寄越す』
から、こういうのもいる。まあ、ここまでのはさすがに珍しいけど。
僕は、敢えて自分からは構うことはせずに、好きにさせた。
でも、こういう奴らだから自分で食うものを用意はできないのもあって、それだけは僕が与える。
他の生贄も、野草や木の実を拾うくらいならできても、猪とかを捕らえるとなると難しいし、僕が捕らえて与えてた。
それを自分で料理したりして飯にするんだ。
<人間の姿をした獣>を我が子のように扱う女も、料理くらいは自分でできていたのが、時間が経つにつれ、壊れた頭が癒えてきたのか、野草や木の実を拾うのも自分でやるようになっていったな。
しかも、
「ホトリ、よしよし……」
<人間の姿をした獣>を<ホトリ>と呼ぶようにもなってた。
きっと、自分が生んだ子の名だったんだろう。
人間はこの女と<ホトリ>のようなのを、僕に始末させようとするくらいには毛嫌いするが、僕にとってみれば大して違わない。
他の生贄達も、女がホトリの世話をしている分には構うこともなかった。下手に構って面倒なことになるのも嫌だったようだ。
何より僕が二人を好きにさせていたから、それに異を唱えるのも憚られただろうしな。
ここでは、人間の里のように仕事をしなきゃ生きていけないわけでもない。
簡単に死なれたら嫌だから僕が食い物くらいは用意するし、それ以外は好きにすればよかっただけだ。
それでも、
『人間らしく生きたい』
という気持ちはあるらしいな。
いくつもの年月が過ぎても、ホトリは、自分を我が子のように扱うその女とずっと一緒にいた。ホトリ自身にとっても、親みたいなものになってた感じか。
それでも言葉までは話せず、時々、
「う~……」
とか、
「あ~……」
とか、唸るだけだった。
なのに、女には、
「おなかすいたのね」
「眠いのね」
みたいに声を掛けたりもする。女には分かるようだ。
さらに、ホトリは服は着ようとしないが、洞の中は火を焚いていれば冬でも暖かく、大丈夫だった。
女は、湯に浸した布で、ホトリの体を拭いてやってもいた。
その姿は、間違いなく幼子の世話をする母親のそれだった。
そうだ。いつの間にか、<獣と、その飼い主>という様子じゃなくなっていたんだ。
ホトリの体はすっかり大人のそれになっていても、振る舞いは何も変わらない。
だから女の方も、ずっと<我が子>を愛し続けられたんだろうな。
自分の下を巣立つこともない我が子を……
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる