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ただの気まぐれで暇潰し
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家に戻ると、持ってきた布団を敷いて、ヒャクの着物を脱がして、割れた土の瓶を直して水を張って、小便で濡れていない部分を水に浸して湿らせ、それで彼女の体を拭いて、ヒャクがここにきた時に着ていた着物を新しく敷いた布団の上に広げ、彼女を抱き上げてそこに下し、着物を着せてやった。
人間にとっては大変かもしれないその作業も、僕にとってはヒャクが目を覚ますまでのただの暇潰しだ。
わざわざそんな手間を掛けなくても、布団も着物も僕が作ればいいし、体を拭わなくても綺麗にすることはできる。
僕が掛ける<手間>は、ほとんど全てがただの気まぐれなんだ。死なず滅びず朽ちることのない僕は、こうやってわざわざすることを作らないと何もする必要がないからね。
自分でも、自分がなぜ存在しているのか分からない。人間達は生まれて生きて何かを成そうと必死になってそして死んでいく。たった何十年かの時間で。でも、常に<何か>してるんだ。
飯を食って糞をして寝て起きて飯を食って糞をして寝て。
泣いて笑って怒って拗ねて。
子を成して育てて老いて死んでいく。
それに比べて僕は、何もする必要がない。飯も食わなくてもいいし糞もしなくてもいいし寝なくてもいいし、泣く必要も、笑う必要も、怒る必要も、拗ねる必要も、本当はないんだ。
だから子を成すこともないし、育てることもないし、子に看取られて死んでいくこともない。
何もしなくても、僕は存在し続ける。ただただ僕として。
本当になんなんだろうな。
すうすうと穏やかに寝息を立てるヒャクの姿を見ながら、そんなことを考えていた。
こうしているのも、結局はただの気まぐれだし暇潰し以外のなにものでもない。
同情でもなんでもないんだ。僕には人間のような感覚がない。
すると、不意に、
「あ……あぁ……うあぁ……」
ヒャクが声を上げた。
目を覚ましたんじゃない。夢を見てうなされているだけだ。
「……」
僕はそんな彼女の体をそっと撫でる。これもただの気まぐれに過ぎない。でも、その途端、ヒャクはまた落ち着いて寝息を立て始めた。
そうして丸々昼と夜が過ぎ、その間にも二度ばかりヒャクが寝小便をするたびに着替えさせて体を拭いて、二度目の朝日が洞の外を照らし始めた頃、
「ん……」
ヒャクが小さく声を上げた。
それまでの夢でうなされていたのとは違う声。彼女の意識が浮き上がってくるのが分かる。そして、
「……」
彼女はうっすらと目を開けた。
目覚めたんだ。
その彼女がぼんやりと視線をめぐらせるのも僕は黙って見ていた。そんな僕の姿を彼女が捉えた瞬間、
「―――――っ!?」
ヒャクが跳ねるように体を起こしたのだった。
人間にとっては大変かもしれないその作業も、僕にとってはヒャクが目を覚ますまでのただの暇潰しだ。
わざわざそんな手間を掛けなくても、布団も着物も僕が作ればいいし、体を拭わなくても綺麗にすることはできる。
僕が掛ける<手間>は、ほとんど全てがただの気まぐれなんだ。死なず滅びず朽ちることのない僕は、こうやってわざわざすることを作らないと何もする必要がないからね。
自分でも、自分がなぜ存在しているのか分からない。人間達は生まれて生きて何かを成そうと必死になってそして死んでいく。たった何十年かの時間で。でも、常に<何か>してるんだ。
飯を食って糞をして寝て起きて飯を食って糞をして寝て。
泣いて笑って怒って拗ねて。
子を成して育てて老いて死んでいく。
それに比べて僕は、何もする必要がない。飯も食わなくてもいいし糞もしなくてもいいし寝なくてもいいし、泣く必要も、笑う必要も、怒る必要も、拗ねる必要も、本当はないんだ。
だから子を成すこともないし、育てることもないし、子に看取られて死んでいくこともない。
何もしなくても、僕は存在し続ける。ただただ僕として。
本当になんなんだろうな。
すうすうと穏やかに寝息を立てるヒャクの姿を見ながら、そんなことを考えていた。
こうしているのも、結局はただの気まぐれだし暇潰し以外のなにものでもない。
同情でもなんでもないんだ。僕には人間のような感覚がない。
すると、不意に、
「あ……あぁ……うあぁ……」
ヒャクが声を上げた。
目を覚ましたんじゃない。夢を見てうなされているだけだ。
「……」
僕はそんな彼女の体をそっと撫でる。これもただの気まぐれに過ぎない。でも、その途端、ヒャクはまた落ち着いて寝息を立て始めた。
そうして丸々昼と夜が過ぎ、その間にも二度ばかりヒャクが寝小便をするたびに着替えさせて体を拭いて、二度目の朝日が洞の外を照らし始めた頃、
「ん……」
ヒャクが小さく声を上げた。
それまでの夢でうなされていたのとは違う声。彼女の意識が浮き上がってくるのが分かる。そして、
「……」
彼女はうっすらと目を開けた。
目覚めたんだ。
その彼女がぼんやりと視線をめぐらせるのも僕は黙って見ていた。そんな僕の姿を彼女が捉えた瞬間、
「―――――っ!?」
ヒャクが跳ねるように体を起こしたのだった。
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