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自身番
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<剽賊>に絡まれて、面倒臭くなって、僕は、
<神隠し>
でその場を立ち去ろうかとも考えた。<神隠し>というのは、瞬きするくらいの間にずっと遠くまで人や物を移す力だ。
僕自身にしてみれば別に名前もない普通のことなんだけど、僕が何度か使ったそれを人間達がそう呼んでたから、僕もそう呼ぶことにしただけなんだけどね。
でも、その時、
「うおおおおおおっっ!!」
と、人間の<気迫>が。
すると、僕の背後にいた二人のうちの一人が、突然、弾かれたみたいに前へとつんのめる。
で、そのまま、動かなくなった。気を失ったみたいだな。
「なっ!?」
男達が焦ったように声を上げるけど、もう一人の男も、振り返ろうとして、でも振り返ることができずに、やっぱり弾かれるみたいにして地面に転がった。
何かでとても強く打ち据えられたみたいだ。
見ると、打ち倒された男達の向こうに、また別の男の姿が。その手には、どうやら鉄でできた<棒>。先が二股に分かれている、確か、<さすまた>とかいう武器だ。
なるほど、それで男達を後ろから強く突いたんだな。そんな鉄の棒で勢いよく後ろから突かれたら、いくら<刃物>じゃないと言ったって息ぐらい簡単に止まることもあって気を失ったりもするだろうな。
新しく現れた男は、髪を短く刈ってがっしりした体にエンジ色の法被を羽織った、威勢のいい、意志の強さを表していそうな太い眉が印象的な若い男だった。
男が羽織っている法被には、『守護』を意味する文字が記されている。
僕が町に入った時に何度も見かけた姿だ。街のあちこちに、同じ法被を着て、やっぱり<さすまた>を手にした男達が何人も立ってた。
街の<自身番>だというのはすぐに分かった。
その自身番の男は、
「やいやいてめえら! このヒアカ様が自身番を務める街で悪事たあ、いい度胸してやがんな!? 一人残らずぶちのめして番屋に引きずっていってやらあ!!」
見た目どおりに威勢のいい声でそう発すると、剽賊の男達は、
「くそっ! いつの間に!?」
と苦々しく口にした。自身番の目の届かない場所を選んだつもりだったんだろうな。でも、隠れ切れなかった。
人間の自身番が現れたなら、僕はもうそれに任せればいいと思った。人間のことは人間がするのが当然だ。
僕が高みの見物を決め込むと、自身番の男は、
「おらあっ!!」
間違いなく幼子くらいの重さはありそうな鉄の<さすまた>を軽々と操り、僕の脇を走り抜けて剽賊の男達へと向かっていった。
すると剽賊の男達のうちの一人は踵を返して一目散に逃げ出したけど、残りの二人は、
「こんな上玉前にして逃げられるかよお!!」
「死ねやあ!!」
刃物を手に自身番の男の男に立ち向かったのだった。
<神隠し>
でその場を立ち去ろうかとも考えた。<神隠し>というのは、瞬きするくらいの間にずっと遠くまで人や物を移す力だ。
僕自身にしてみれば別に名前もない普通のことなんだけど、僕が何度か使ったそれを人間達がそう呼んでたから、僕もそう呼ぶことにしただけなんだけどね。
でも、その時、
「うおおおおおおっっ!!」
と、人間の<気迫>が。
すると、僕の背後にいた二人のうちの一人が、突然、弾かれたみたいに前へとつんのめる。
で、そのまま、動かなくなった。気を失ったみたいだな。
「なっ!?」
男達が焦ったように声を上げるけど、もう一人の男も、振り返ろうとして、でも振り返ることができずに、やっぱり弾かれるみたいにして地面に転がった。
何かでとても強く打ち据えられたみたいだ。
見ると、打ち倒された男達の向こうに、また別の男の姿が。その手には、どうやら鉄でできた<棒>。先が二股に分かれている、確か、<さすまた>とかいう武器だ。
なるほど、それで男達を後ろから強く突いたんだな。そんな鉄の棒で勢いよく後ろから突かれたら、いくら<刃物>じゃないと言ったって息ぐらい簡単に止まることもあって気を失ったりもするだろうな。
新しく現れた男は、髪を短く刈ってがっしりした体にエンジ色の法被を羽織った、威勢のいい、意志の強さを表していそうな太い眉が印象的な若い男だった。
男が羽織っている法被には、『守護』を意味する文字が記されている。
僕が町に入った時に何度も見かけた姿だ。街のあちこちに、同じ法被を着て、やっぱり<さすまた>を手にした男達が何人も立ってた。
街の<自身番>だというのはすぐに分かった。
その自身番の男は、
「やいやいてめえら! このヒアカ様が自身番を務める街で悪事たあ、いい度胸してやがんな!? 一人残らずぶちのめして番屋に引きずっていってやらあ!!」
見た目どおりに威勢のいい声でそう発すると、剽賊の男達は、
「くそっ! いつの間に!?」
と苦々しく口にした。自身番の目の届かない場所を選んだつもりだったんだろうな。でも、隠れ切れなかった。
人間の自身番が現れたなら、僕はもうそれに任せればいいと思った。人間のことは人間がするのが当然だ。
僕が高みの見物を決め込むと、自身番の男は、
「おらあっ!!」
間違いなく幼子くらいの重さはありそうな鉄の<さすまた>を軽々と操り、僕の脇を走り抜けて剽賊の男達へと向かっていった。
すると剽賊の男達のうちの一人は踵を返して一目散に逃げ出したけど、残りの二人は、
「こんな上玉前にして逃げられるかよお!!」
「死ねやあ!!」
刃物を手に自身番の男の男に立ち向かったのだった。
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