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新生活
ワイバーン、降下する
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そして、錬義と斬竜が見ている前で、ワイバーンがゆっくりと降下、草原へと着地した。
ちなみに、<ワイバーン>と呼ばれているのは一機だけで、残る二機は<フライトユニット>と呼ばれるものだった。ドーベルマンSpec.V3と連結させて空を飛ばす装備である。
錬義が<錬是>に戻ってきた時に出迎えてくれた<航空戦力としてのドーベルマンSpec.V3>と同じものだ。ただし今回は、<マヒル>と<ヤナカ>という人間の護衛として派遣されたものであるが。
すると、ワイバーンから二つの人影が、下りてくる。地面に立つと、大変な身長差だった。小さい方は大きい方の半分くらいしかなさそうにさえ見える。しかも、大きい方が小さい方を肩車するのが分かった。
一方、フライトユニットと連結されていたドーベルマンSpec.V3は、<総合研究都市アンデルセン>で見掛けたそれとは明らかに様子が違っている。何しろ見た目が<達磨>のようなのだ。それは、<擬装>だった。ドーベルマンSpec.V3に対して強い嫌悪感を持つ斬竜に配慮して、そう見えないようにアンデルセンが施してくれたものだった。
護衛としてはホビットMk-XXXでは心許ない。しかし、ドーベルマンSpec.V3そのままでは斬竜が怯えてしまう。
だからこその苦肉の策だった。当然、その擬装は必要とあらば簡単にパージして本来の機能を発揮することができるようになっている。
が、赤茶色の得体の知れないものが近付いてきていることに、斬竜は明らかに警戒していた。それがドーベルマンSpec.V3だと分かれば怯えるところだろうが、今はまだそれを察していないので警戒という形になる。
けれど、
「……!」
二つの赤茶色の達磨のようなものを従えて近付いてくる者を見た時、斬竜の様子が変わった。警戒が一気に緩んだのだ。まったく解いてしまったわけではないものの、明らかに緩んでいる。
まるで、懐かしいものでも見付けたかのように。
その後、百メートルくらいまで近付いたところで、
「やあ! 久しぶり! 錬義!!」
手を挙げて声を掛けてくる。自然と腹から出ている、よく通る声だった。それを発した者の姿も、錬義にはもうはっきりと見えていた。
白いタンクトップとベージュのカーゴパンツを身に着けた、青黒い肌の異形の者。頭には大きな鱗がまるで髪のように何枚も被さっている。しかもその腰から延びる、<尻尾>。
明らかに<恐竜>を人間に似せて作ったかのような印象を持たせるその姿は、<竜女帝>にも通ずるそれであったのだった。
そんな相手に、錬義も笑顔で手を挙げて、
「やあ! マヒル! 元気そうだな!!」
応えたのだった。
ちなみに、<ワイバーン>と呼ばれているのは一機だけで、残る二機は<フライトユニット>と呼ばれるものだった。ドーベルマンSpec.V3と連結させて空を飛ばす装備である。
錬義が<錬是>に戻ってきた時に出迎えてくれた<航空戦力としてのドーベルマンSpec.V3>と同じものだ。ただし今回は、<マヒル>と<ヤナカ>という人間の護衛として派遣されたものであるが。
すると、ワイバーンから二つの人影が、下りてくる。地面に立つと、大変な身長差だった。小さい方は大きい方の半分くらいしかなさそうにさえ見える。しかも、大きい方が小さい方を肩車するのが分かった。
一方、フライトユニットと連結されていたドーベルマンSpec.V3は、<総合研究都市アンデルセン>で見掛けたそれとは明らかに様子が違っている。何しろ見た目が<達磨>のようなのだ。それは、<擬装>だった。ドーベルマンSpec.V3に対して強い嫌悪感を持つ斬竜に配慮して、そう見えないようにアンデルセンが施してくれたものだった。
護衛としてはホビットMk-XXXでは心許ない。しかし、ドーベルマンSpec.V3そのままでは斬竜が怯えてしまう。
だからこその苦肉の策だった。当然、その擬装は必要とあらば簡単にパージして本来の機能を発揮することができるようになっている。
が、赤茶色の得体の知れないものが近付いてきていることに、斬竜は明らかに警戒していた。それがドーベルマンSpec.V3だと分かれば怯えるところだろうが、今はまだそれを察していないので警戒という形になる。
けれど、
「……!」
二つの赤茶色の達磨のようなものを従えて近付いてくる者を見た時、斬竜の様子が変わった。警戒が一気に緩んだのだ。まったく解いてしまったわけではないものの、明らかに緩んでいる。
まるで、懐かしいものでも見付けたかのように。
その後、百メートルくらいまで近付いたところで、
「やあ! 久しぶり! 錬義!!」
手を挙げて声を掛けてくる。自然と腹から出ている、よく通る声だった。それを発した者の姿も、錬義にはもうはっきりと見えていた。
白いタンクトップとベージュのカーゴパンツを身に着けた、青黒い肌の異形の者。頭には大きな鱗がまるで髪のように何枚も被さっている。しかもその腰から延びる、<尻尾>。
明らかに<恐竜>を人間に似せて作ったかのような印象を持たせるその姿は、<竜女帝>にも通ずるそれであったのだった。
そんな相手に、錬義も笑顔で手を挙げて、
「やあ! マヒル! 元気そうだな!!」
応えたのだった。
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