凶竜の姫様

出逢い

錬義、斬竜の頭を洗う

こうして、斬竜キルはカップラーメンを二つ。錬義れんぎは一つ食べ、それから風呂に向かった。あの気持ちいい水浴びだと察して、斬竜もおとなしくついてくる。

そして風呂に入ると、錬義は、

「頭からお湯を掛けるからね」

言いながらシャワーで彼女の頭にぬるい湯をかけ始めた。すると斬竜は自ら前のめりになって、顔にかかり過ぎないようにした。たぶん、自分で水浴びをしていた時にもそうしたことがあったのだろう。

昨日の時点でもできたのかもしれないが、昨日はあくまでこの場に危険がないことを知ってもらうのが目的だったので、そこまではしなかっただけだ。

さらに今日は、シャンプーも使う。が、一度目は彼女の髪の汚れがひどすぎてほとんど泡が立たなかった。それをシャワーで流し、二度目のシャンプー。しかしこれもやはりほとんど泡が立たない。

無理もない、昨日だって、ぬるい水に浸けた状態で揉むようにして洗ってかろうじてという状態だったのだから。

続けて三度目で、ようやく泡が立ち始める。とは言え、それでも普通とは明らかに違っていた。そして四度目。ここでやっとまともに泡が立った。できればもう一回くらいは洗いたかったが、斬竜が焦れ始めている気配を察し、そこまでにしておいた。

けれども、一目で見違えるほどに美しい青色に変わった。本当にこんな感じの羽を持った鳥がいただろうという色に。

「ごめんね。時間掛かって」

そう言う錬義の前で、斬竜はブルブルと頭を振って雫を飛ばす。それから錬義は、今度は石鹸を泡立てて彼女の体を洗い始めた。これも、斬竜はうっとりとした表情でされるがままに。よっぽど気持ちいいのだろう。

もっとも、性的に気持ちいいという印象ではないが。やはり、主人に体を洗ってもらうのが好きな犬が風呂を堪能しているという感じだろうか。

これにより、肌の方も改めて綺麗になって、艶やかな青い髪と褐色の肌が何とも言えないエキゾチックな雰囲気になった。そして美しい。

さらに二人で湯船に浸かって、寛ぐ。

これから少々大変な試験が待ち受けているとも知らず、斬竜は蕩けきった表情で錬義に体を預けていた。

男女で一緒の浴槽に浸かっているというのに、不思議とセクシャルな雰囲気がない。それは彼女がやはり性的に発情しているわけじゃないからだろう。

なのでそういう部分についてはもう少し先になりそうだ。



一方、錬義と斬竜が風呂に入っている間、ミネルバは二人の服を、コテージに備え付けられた洗濯機で洗濯していたのだった。