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出逢い
凶竜の姫様、ラーメンを召し上がる
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「……」
凶竜の姫様は、錬義を警戒しながらもコッヘルに近付き、それに手を伸ばした。しかし、コッヘルがかなりの熱を発しているのを察したのか、触れる寸前で指をひっこめる。ひっこめつつも再度伸ばし、温度を測るかのようにじりじりと近付けていく。
指先に感じる熱の程度を確かめているのだろう。そうして、つん、と指先を触れさせ、それからも何度かつんつんと触れさせた後、このくらいなら大丈夫と判断したか、コッヘルの縁を掴み、自分へと引き寄せた。
それから中を覗き込んでふんふんと匂いを嗅ぐ。ここまでですでに五分ほど。普通に考えればすっかり伸びてしまっているだろうが、凶竜の姫様はコッヘルに手を突っ込んでラーメンを掴み上げ口へと運んだ。
ずじゅっ!
びじゅっ!
ぢゃぶっ!
とてもラーメンを食べているとは思えない音をさせながら、彼女はコッヘルの中のラーメンを次々と口に運ぶ。
そうして麵がなくなると今度は自分の手をスープに浸して、手に付いたスープを舐め取る形でさらに味わう。旨味成分はスープにこそ溶けているので、彼女としてはそれを味わわない理由がない。
夢中になってラーメンを貪る彼女の姿を、
『かわいい……♡』
錬義は満面の笑顔で見守っていた。見守りつつ、コンロの火で、皮を剝いだ<陸イグアナ竜>を炙る。食べるためだ。
陸イグアナ竜の焼け具合を確かめる錬義の前で、凶竜の姫様はついにコッヘルに頭を突っ込んで、残ったスープを長い舌でベロリベロリと舐め取り始める。すべて味わい尽くそうということか。
けれど錬義はそれについても何も言わないどころか、微笑ましそうに見ている。
で、遂に完全に味がなくなったコッヘルを、彼女は地面に放り出し、今度は錬義が焼いていた陸イグアナ竜へと視線を向けた。まだ物足りないようだ。
「こっちも食べたい?」
錬義がそう声を掛けるもののさすがに意味は通じなかったようだが、ふんふんと鼻を鳴らしながらじりじりと近付いてくる。
だから彼は、
「ちょっと待っててね」
言いながら焼けた陸イグアナ竜の後ろ脚を、
「熱っ! 熱ちち…!」
何度も触れたり離したりを続けて冷めてきたところでガㇱッと掴み、ブチブチと引きちぎった。
なるべく腹の方の肉も付くようにして。
こうして、脚と脇腹の辺りの肉が取れたのを、
「どうぞ」
彼女の方へと投げる。すると彼女はそれを空中でキャッチ。
「!」
しかし熱かったことで手を離したものの思い直して再度空中でキャッチし、ふんふんと匂いを嗅いで、それからぐあっと喰らいついたのだった。
凶竜の姫様は、錬義を警戒しながらもコッヘルに近付き、それに手を伸ばした。しかし、コッヘルがかなりの熱を発しているのを察したのか、触れる寸前で指をひっこめる。ひっこめつつも再度伸ばし、温度を測るかのようにじりじりと近付けていく。
指先に感じる熱の程度を確かめているのだろう。そうして、つん、と指先を触れさせ、それからも何度かつんつんと触れさせた後、このくらいなら大丈夫と判断したか、コッヘルの縁を掴み、自分へと引き寄せた。
それから中を覗き込んでふんふんと匂いを嗅ぐ。ここまでですでに五分ほど。普通に考えればすっかり伸びてしまっているだろうが、凶竜の姫様はコッヘルに手を突っ込んでラーメンを掴み上げ口へと運んだ。
ずじゅっ!
びじゅっ!
ぢゃぶっ!
とてもラーメンを食べているとは思えない音をさせながら、彼女はコッヘルの中のラーメンを次々と口に運ぶ。
そうして麵がなくなると今度は自分の手をスープに浸して、手に付いたスープを舐め取る形でさらに味わう。旨味成分はスープにこそ溶けているので、彼女としてはそれを味わわない理由がない。
夢中になってラーメンを貪る彼女の姿を、
『かわいい……♡』
錬義は満面の笑顔で見守っていた。見守りつつ、コンロの火で、皮を剝いだ<陸イグアナ竜>を炙る。食べるためだ。
陸イグアナ竜の焼け具合を確かめる錬義の前で、凶竜の姫様はついにコッヘルに頭を突っ込んで、残ったスープを長い舌でベロリベロリと舐め取り始める。すべて味わい尽くそうということか。
けれど錬義はそれについても何も言わないどころか、微笑ましそうに見ている。
で、遂に完全に味がなくなったコッヘルを、彼女は地面に放り出し、今度は錬義が焼いていた陸イグアナ竜へと視線を向けた。まだ物足りないようだ。
「こっちも食べたい?」
錬義がそう声を掛けるもののさすがに意味は通じなかったようだが、ふんふんと鼻を鳴らしながらじりじりと近付いてくる。
だから彼は、
「ちょっと待っててね」
言いながら焼けた陸イグアナ竜の後ろ脚を、
「熱っ! 熱ちち…!」
何度も触れたり離したりを続けて冷めてきたところでガㇱッと掴み、ブチブチと引きちぎった。
なるべく腹の方の肉も付くようにして。
こうして、脚と脇腹の辺りの肉が取れたのを、
「どうぞ」
彼女の方へと投げる。すると彼女はそれを空中でキャッチ。
「!」
しかし熱かったことで手を離したものの思い直して再度空中でキャッチし、ふんふんと匂いを嗅いで、それからぐあっと喰らいついたのだった。
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