凶竜の姫様

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
11 / 96
出逢い

卵、美味い

しおりを挟む
ストルティオ竜ストルティオの卵一個をいただき岩の上に戻った錬義れんぎだったが、そんな彼に、

「ブーン!」

ミネルバがまた、抗議するかのようにプロペラを回した。それにより、わずかに機体が揺れる。これがまた本当に抗議のために身をよじったようにも見えてしまう。

「あはは♡ ごめんよ、ごめん。でも、大丈夫だったろ?」

まるで会話するようにそう口にする錬義れんぎとのやり取りも、息が合っている。

そして錬義れんぎは、防寒着のジャケットの前を開けて内ポケットから、<タガネ>のようなものを取り出し、さらに金槌のようなものを取り出して、タガネの先を卵の頂上に当て、ガツンとそこに金槌を打ち付けた。

すると、ダチョウの卵のように頑丈そうな殻に穴が開き。それを上にして彼は、卵を直接コンロに乗せ、弱火で炙る。そのまま<ゆで卵>と言うか<炙り卵>にするつもりのようだ。

それができるまでの間、今度はメモ帳を取り出して、ボールペンのような筆記用具で記録を付けていく。

「新暦〇八三一年三月二日。連是れんぜより一万二千キロ。非公式ながら新記録を達成。なれど、凶竜の子孫らしき少女?と出逢う。身体能力はすこぶる高し。言語によるコミュニケーションはできない模様。<竜女帝>の子孫と推定。できれば再会を望みたい。

なお、エレファントス竜エレファントスの亜種と思しき鵺竜こうりゅう五頭と、ストルティオ竜ストルティオの亜種と思しき亜竜ありゅう五頭にも遭遇。と」

呟きつつ。大まかな情報を書き込んでいった。そのメモ帳には、びっしりと記録が書き込まれている。これを持ち帰り、正式な論文なり何なりとしてまとめるのだろう。

そんなこんなで二十分ほどすると、卵に開けられた穴からぷつぷつと泡が溢れ、湯気も立っていた。穴の周りに白身のような弾力のある塊が付着する。白身の水分が泡となって溢れたのが固まったのだろう。

「よ~っし、そろそろいいかなあ」

言いながら錬義れんぎは、卵をコンロから降ろして自分の足で挟み固定。そこに斜めからタガネを当てて金槌で打つ。それを、少しずつ卵を回転させながら何度も続け、一周したところで、卵に直接、金槌をゴツン!と打ち付けた。すると、タガネを当てた部分が「バキッ!」と音を立てて割れ、まるで蓋のように外れる。

すると湯気がもあっと上がり、中には、プルプルとした白身がたっぷりと詰まっていた。黄身は埋もれているようで見えない。

そこに錬義れんぎは、さらに内ポケットから出してきた容器を振って、黒っぽい粉末を白身に掛けた。どうやら<胡椒>らしきもののようだ。

そうして簡単に味付けたしただけのものを、箸が入っていた二の腕のところの細長いポケットから今度は木製の匙を出してきて掬い、湯気を上げるそれを口へと運んだのだった。

「うん! 美味い!」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の召喚獣が、どう考えてもファンタジーじゃないんですけど? 〜もふもふ? いいえ……カッチカチです!〜

空クジラ
SF
 愛犬の死をキッカケに、最新VRMMOをはじめた女子高生 犬飼 鈴 (いぬかい すず)は、ゲーム内でも最弱お荷物と名高い不遇職『召喚士』を選んでしまった。  右も左も分からぬまま、始まるチュートリアル……だが戦いの最中、召喚スキルを使った鈴に奇跡が起こる。  ご主人様のピンチに、死んだはずの愛犬コタロウが召喚されたのだ! 「この声? まさかコタロウ! ……なの?」 「ワン」  召喚された愛犬は、明らかにファンタジーをぶっちぎる姿に変わり果てていた。  これはどこからどう見ても犬ではないが、ご主人様を守るために転生した犬(?)と、お荷物職業とバカにされながらも、いつの間にか世界を救っていた主人公との、愛と笑いとツッコミの……ほのぼの物語である。  注意:この物語にモフモフ要素はありません。カッチカチ要素満載です! 口に物を入れながらお読みにならないよう、ご注意ください。  この小説は『小説家になろう』『カクヨム』にも投稿しています。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。 しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。 タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。 数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。 すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう! 手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。 そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。 無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。 和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ” (全20話)の続編。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211 男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は? そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。 格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。

これって、パラレってるの?

kiyin
SF
一人の女子高校生が朝ベットの上で起き掛けに謎のレバーを発見し、不思議な「ビジョン」を見る。 いくつかの「ビジョン」によって様々な「人生」を疑似体験することになる。 人生の「価値」って何?そもそも人生に「価値」は必要なの? 少女が行きついた最後のビジョンは「虚無」の世界だった。 この話はハッピーエンドなの?バッドエンドなの? それは読み手のあなたが決めてください。

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...