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出逢い
卵、美味い
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ストルティオ竜の卵一個をいただき岩の上に戻った錬義だったが、そんな彼に、
「ブーン!」
ミネルバがまた、抗議するかのようにプロペラを回した。それにより、わずかに機体が揺れる。これがまた本当に抗議のために身をよじったようにも見えてしまう。
「あはは♡ ごめんよ、ごめん。でも、大丈夫だったろ?」
まるで会話するようにそう口にする錬義とのやり取りも、息が合っている。
そして錬義は、防寒着のジャケットの前を開けて内ポケットから、<タガネ>のようなものを取り出し、さらに金槌のようなものを取り出して、タガネの先を卵の頂上に当て、ガツンとそこに金槌を打ち付けた。
すると、ダチョウの卵のように頑丈そうな殻に穴が開き。それを上にして彼は、卵を直接コンロに乗せ、弱火で炙る。そのまま<ゆで卵>と言うか<炙り卵>にするつもりのようだ。
それができるまでの間、今度はメモ帳を取り出して、ボールペンのような筆記用具で記録を付けていく。
「新暦〇八三一年三月二日。連是より一万二千キロ。非公式ながら新記録を達成。なれど、凶竜の子孫らしき少女?と出逢う。身体能力はすこぶる高し。言語によるコミュニケーションはできない模様。<竜女帝>の子孫と推定。できれば再会を望みたい。
なお、エレファントス竜の亜種と思しき鵺竜五頭と、ストルティオ竜の亜種と思しき亜竜五頭にも遭遇。と」
呟きつつ。大まかな情報を書き込んでいった。そのメモ帳には、びっしりと記録が書き込まれている。これを持ち帰り、正式な論文なり何なりとしてまとめるのだろう。
そんなこんなで二十分ほどすると、卵に開けられた穴からぷつぷつと泡が溢れ、湯気も立っていた。穴の周りに白身のような弾力のある塊が付着する。白身の水分が泡となって溢れたのが固まったのだろう。
「よ~っし、そろそろいいかなあ」
言いながら錬義は、卵をコンロから降ろして自分の足で挟み固定。そこに斜めからタガネを当てて金槌で打つ。それを、少しずつ卵を回転させながら何度も続け、一周したところで、卵に直接、金槌をゴツン!と打ち付けた。すると、タガネを当てた部分が「バキッ!」と音を立てて割れ、まるで蓋のように外れる。
すると湯気がもあっと上がり、中には、プルプルとした白身がたっぷりと詰まっていた。黄身は埋もれているようで見えない。
そこに錬義は、さらに内ポケットから出してきた容器を振って、黒っぽい粉末を白身に掛けた。どうやら<胡椒>らしきもののようだ。
そうして簡単に味付けたしただけのものを、箸が入っていた二の腕のところの細長いポケットから今度は木製の匙を出してきて掬い、湯気を上げるそれを口へと運んだのだった。
「うん! 美味い!」
「ブーン!」
ミネルバがまた、抗議するかのようにプロペラを回した。それにより、わずかに機体が揺れる。これがまた本当に抗議のために身をよじったようにも見えてしまう。
「あはは♡ ごめんよ、ごめん。でも、大丈夫だったろ?」
まるで会話するようにそう口にする錬義とのやり取りも、息が合っている。
そして錬義は、防寒着のジャケットの前を開けて内ポケットから、<タガネ>のようなものを取り出し、さらに金槌のようなものを取り出して、タガネの先を卵の頂上に当て、ガツンとそこに金槌を打ち付けた。
すると、ダチョウの卵のように頑丈そうな殻に穴が開き。それを上にして彼は、卵を直接コンロに乗せ、弱火で炙る。そのまま<ゆで卵>と言うか<炙り卵>にするつもりのようだ。
それができるまでの間、今度はメモ帳を取り出して、ボールペンのような筆記用具で記録を付けていく。
「新暦〇八三一年三月二日。連是より一万二千キロ。非公式ながら新記録を達成。なれど、凶竜の子孫らしき少女?と出逢う。身体能力はすこぶる高し。言語によるコミュニケーションはできない模様。<竜女帝>の子孫と推定。できれば再会を望みたい。
なお、エレファントス竜の亜種と思しき鵺竜五頭と、ストルティオ竜の亜種と思しき亜竜五頭にも遭遇。と」
呟きつつ。大まかな情報を書き込んでいった。そのメモ帳には、びっしりと記録が書き込まれている。これを持ち帰り、正式な論文なり何なりとしてまとめるのだろう。
そんなこんなで二十分ほどすると、卵に開けられた穴からぷつぷつと泡が溢れ、湯気も立っていた。穴の周りに白身のような弾力のある塊が付着する。白身の水分が泡となって溢れたのが固まったのだろう。
「よ~っし、そろそろいいかなあ」
言いながら錬義は、卵をコンロから降ろして自分の足で挟み固定。そこに斜めからタガネを当てて金槌で打つ。それを、少しずつ卵を回転させながら何度も続け、一周したところで、卵に直接、金槌をゴツン!と打ち付けた。すると、タガネを当てた部分が「バキッ!」と音を立てて割れ、まるで蓋のように外れる。
すると湯気がもあっと上がり、中には、プルプルとした白身がたっぷりと詰まっていた。黄身は埋もれているようで見えない。
そこに錬義は、さらに内ポケットから出してきた容器を振って、黒っぽい粉末を白身に掛けた。どうやら<胡椒>らしきもののようだ。
そうして簡単に味付けたしただけのものを、箸が入っていた二の腕のところの細長いポケットから今度は木製の匙を出してきて掬い、湯気を上げるそれを口へと運んだのだった。
「うん! 美味い!」
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