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出逢い
朋群人、メンタリティも野生寄り
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ミネルバの本体重量は約八十キロ。そこに約二十キロの各種装備を搭載していることで、百キロ以上の総重量になっていた。なのに錬義は、そんなミネルバを抱え、そっと岩の上に下ろしてみせた。
とんでもない膂力である。
もっとも、だからこそ、ミネルバ以外には自分の体一つで新天地ハンターをしつつ鵺竜の調査などしていられるのだろうが。
鵺竜の生息地にただの人間が降り立てば、本来は単なる<餌>にしかならないのだから。
こうして、高さ七メートルほどの重なった岩の上に陣取った錬義は、ミネルバの翼の中に設けられたトランクを開けてそこから、固形燃料コンロ、マッチ、コッヘル、水筒、布に包まれた保存食、寝袋らしきものを取り出し広げ、早速、水筒の水をコッヘルに注ぎ、湯を沸かしだした。
岩の下では、ストルティオ竜が、
「ギョアッ!!」
「ギェハアッ!!」
などと声を上げて騒いでいたが、錬義はまるで意に介することなく、沸いた湯に布から掴み出した<保存食>を放り込んだ。
それは、まぎれもなく<乾麺タイプのインスタントラーメン>だった。それも、スープが絡んだ麺と具が一緒にフライされて、沸かした湯にそのまま放り込むだけで<具入りのラーメン>になるものだった。
これによりインスタントラーメンを用意し、上着の二の腕の部分に設けられた細長いポケットから取り出した箸で、
「ゾゾッ!」
と一気にすすった。出来立てでアツアツのそれをものともせず。
しかし、
「物足りないな……」
一食分のラーメンを、汁まで残さず食い切ったもののそう呟いて、
「ブルンッ!」
ミネルバがまるで声でも掛けるようにプロペラを回したのも無視して、岩の上からひらりと空中に身を躍らせた。そして岩を蹴って五頭のストルティオ竜の真ん中に降り立ち、
「ギュアッ!?」
と声を上げたストルティオ竜が牙を剥き出して襲い掛かったのをするりと躱しつつ彼らの巣に入り込んで卵を一つ掴み上げ、
「ごめんね、一個いただくよ」
笑顔で詫びながらやはり攻撃をするすると躱して岩の上に跳び上がり、自分の頭より大きな卵を抱えたまま片手の指を岩のわずかな凹凸に引っ掛けて体を持ち上げ、忍者のように頂上まで戻ってしまった。
その姿はやはり、人間の言葉を話し人間の姿はしていても、完全に野生動物のそれであると言えるだろう。
これが、<朋群人>である。人間の知能と野生の獣の身体能力を併せ持った。
加えてメンタリティも野生寄りなので、生きるために他の命を食すことにためらいはない。
とんでもない膂力である。
もっとも、だからこそ、ミネルバ以外には自分の体一つで新天地ハンターをしつつ鵺竜の調査などしていられるのだろうが。
鵺竜の生息地にただの人間が降り立てば、本来は単なる<餌>にしかならないのだから。
こうして、高さ七メートルほどの重なった岩の上に陣取った錬義は、ミネルバの翼の中に設けられたトランクを開けてそこから、固形燃料コンロ、マッチ、コッヘル、水筒、布に包まれた保存食、寝袋らしきものを取り出し広げ、早速、水筒の水をコッヘルに注ぎ、湯を沸かしだした。
岩の下では、ストルティオ竜が、
「ギョアッ!!」
「ギェハアッ!!」
などと声を上げて騒いでいたが、錬義はまるで意に介することなく、沸いた湯に布から掴み出した<保存食>を放り込んだ。
それは、まぎれもなく<乾麺タイプのインスタントラーメン>だった。それも、スープが絡んだ麺と具が一緒にフライされて、沸かした湯にそのまま放り込むだけで<具入りのラーメン>になるものだった。
これによりインスタントラーメンを用意し、上着の二の腕の部分に設けられた細長いポケットから取り出した箸で、
「ゾゾッ!」
と一気にすすった。出来立てでアツアツのそれをものともせず。
しかし、
「物足りないな……」
一食分のラーメンを、汁まで残さず食い切ったもののそう呟いて、
「ブルンッ!」
ミネルバがまるで声でも掛けるようにプロペラを回したのも無視して、岩の上からひらりと空中に身を躍らせた。そして岩を蹴って五頭のストルティオ竜の真ん中に降り立ち、
「ギュアッ!?」
と声を上げたストルティオ竜が牙を剥き出して襲い掛かったのをするりと躱しつつ彼らの巣に入り込んで卵を一つ掴み上げ、
「ごめんね、一個いただくよ」
笑顔で詫びながらやはり攻撃をするすると躱して岩の上に跳び上がり、自分の頭より大きな卵を抱えたまま片手の指を岩のわずかな凹凸に引っ掛けて体を持ち上げ、忍者のように頂上まで戻ってしまった。
その姿はやはり、人間の言葉を話し人間の姿はしていても、完全に野生動物のそれであると言えるだろう。
これが、<朋群人>である。人間の知能と野生の獣の身体能力を併せ持った。
加えてメンタリティも野生寄りなので、生きるために他の命を食すことにためらいはない。
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