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第三幕
今は一時、筆を休めようかな
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僕達はこうして、たくさんのことを考え、心に刻み、自らに言い聞かせながら生きている。
それを、
『面倒臭い』
と吐き捨て嘲る人間も多いけれど、そうやって自身で考え理解し自らを律することを放棄した者のしわ寄せを受けている人間がどれだけいるかさえ考えないんだね。
僕はそれを悲しいと思う。
『自分さえ良ければ』
『自分さえ楽ができれば』
『自分さえ楽しければ』
誰がどれほど苦しんでもかまわない。と、考えるのか……
それが自身に降りかかってくる可能性にさえ、目を瞑って。
そういう生き方をするのも自由なのだとしても、それなら、自らが犠牲になるとしても、泣き言を口にするのはおかしいよね。
逆に、自分がそうなりたくないのなら、
『難しいことは考えない。シンプルに生きる』
と考えるのは成立しないと理解する必要があるんじゃないかな。
自分だけが楽をして、それで誰かが守ってくれると考えるのは、無理があるよ。
『他人がそこまで考えてないのに、自分だけが考えるのは不公平だ!』
と言うかもしれないけど、それは、アオも言っている通り、
『他人の所為にしてる』
だけだよね。
『他人がやらないのなら自分もやりたくない!』
と言っているだけだよね。
だけど、それでは通じないんだ。それでは、自分で自分の身を守ることさえままならない。自分自身が<災いの種>を蒔くことを止められない。
他人に疎まれ、傷付けられる原因を、自ら作ることになるんだから。
それでなくても、一方的に攻撃を仕掛けてくる人間は少なからずいる。その上で自ら他人に攻撃される原因を作るとなれば、そのリスクは飛躍的に高まるんだ。
僕やアオが考えているのは、本質としては、
<リスクコントロール>
なんだよ。
相手の存在を認めなければ、相手もこちらを認めてくれないことが多い。
なるほど、こちらが認めていても認めようとしない人間も確かにいる。でもこれも、こちらがまず認めなければ、
『認める用意がある者まで敵に回す』
ことがあるんだ。
これは、自分の子供が相手でも同じ。まず親が子供の存在を認めなければ、子供も親の存在を認め難くなるんだよ。
だから僕達は、穏やかに生きることができた。余計な敵を作らず、災いを種を蒔かず、穏やかに生きることを心掛けたから。ここから先も僕達は、様々な経験をしながらも、大きな不幸に見舞われることもなく、穏当に生きることができた。
<リスクコントロール>が功を奏したんだよ。
さくらを見送った後のエンディミオンも、彼の子孫らが住む家で、ただ、草花に囲まれて、隠遁生活を続けられてる。
悠里や安和ももちろん元気だ。椿の孫達にも家族ができて、幸せに暮らしている。
吸血鬼と人間の関係については、まだまだ大きく進展する気配はない。僕が生きている間には、難しいかもしれない。
けれど、それでもかまわない。焦る必要はない。
僕も、人間の目から見ても<青年>と呼ばれるようなそれに成長した。ただ、アオを超える女性には、まだ、巡り会えていない。
まだ、<終わり>ではないけど、今は一時、筆を休めようかな。
それを、
『面倒臭い』
と吐き捨て嘲る人間も多いけれど、そうやって自身で考え理解し自らを律することを放棄した者のしわ寄せを受けている人間がどれだけいるかさえ考えないんだね。
僕はそれを悲しいと思う。
『自分さえ良ければ』
『自分さえ楽ができれば』
『自分さえ楽しければ』
誰がどれほど苦しんでもかまわない。と、考えるのか……
それが自身に降りかかってくる可能性にさえ、目を瞑って。
そういう生き方をするのも自由なのだとしても、それなら、自らが犠牲になるとしても、泣き言を口にするのはおかしいよね。
逆に、自分がそうなりたくないのなら、
『難しいことは考えない。シンプルに生きる』
と考えるのは成立しないと理解する必要があるんじゃないかな。
自分だけが楽をして、それで誰かが守ってくれると考えるのは、無理があるよ。
『他人がそこまで考えてないのに、自分だけが考えるのは不公平だ!』
と言うかもしれないけど、それは、アオも言っている通り、
『他人の所為にしてる』
だけだよね。
『他人がやらないのなら自分もやりたくない!』
と言っているだけだよね。
だけど、それでは通じないんだ。それでは、自分で自分の身を守ることさえままならない。自分自身が<災いの種>を蒔くことを止められない。
他人に疎まれ、傷付けられる原因を、自ら作ることになるんだから。
それでなくても、一方的に攻撃を仕掛けてくる人間は少なからずいる。その上で自ら他人に攻撃される原因を作るとなれば、そのリスクは飛躍的に高まるんだ。
僕やアオが考えているのは、本質としては、
<リスクコントロール>
なんだよ。
相手の存在を認めなければ、相手もこちらを認めてくれないことが多い。
なるほど、こちらが認めていても認めようとしない人間も確かにいる。でもこれも、こちらがまず認めなければ、
『認める用意がある者まで敵に回す』
ことがあるんだ。
これは、自分の子供が相手でも同じ。まず親が子供の存在を認めなければ、子供も親の存在を認め難くなるんだよ。
だから僕達は、穏やかに生きることができた。余計な敵を作らず、災いを種を蒔かず、穏やかに生きることを心掛けたから。ここから先も僕達は、様々な経験をしながらも、大きな不幸に見舞われることもなく、穏当に生きることができた。
<リスクコントロール>が功を奏したんだよ。
さくらを見送った後のエンディミオンも、彼の子孫らが住む家で、ただ、草花に囲まれて、隠遁生活を続けられてる。
悠里や安和ももちろん元気だ。椿の孫達にも家族ができて、幸せに暮らしている。
吸血鬼と人間の関係については、まだまだ大きく進展する気配はない。僕が生きている間には、難しいかもしれない。
けれど、それでもかまわない。焦る必要はない。
僕も、人間の目から見ても<青年>と呼ばれるようなそれに成長した。ただ、アオを超える女性には、まだ、巡り会えていない。
まだ、<終わり>ではないけど、今は一時、筆を休めようかな。
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