上 下
568 / 571
第三幕

自身の怠慢が原因で子供がやらかしちゃった親は、もうその時点で<報い>は受けてるんだよ。その上で無関係で無責任な赤の他人が

しおりを挟む
『私はさ、いっつも親に対して厳しいこと言ってるけど、それは別に、<親を攻撃する根拠>にするために言ってるんじゃないからね? 

てか、事が起こってから後出しで責めたって駄目なんだよ。『ことが起こる前に、自分自身の在り方を省みる』のが大事なんであって、本人のことをロクに知らない人間が後から名指しで責めたって、そんなのはただの<憂さ晴らし>でしかないからね? 

それにさ、自身の怠慢が原因で子供がやらかしちゃった親は、もうその時点で<報い>は受けてるんだよ。その上で無関係で無責任な赤の他人が攻撃しなきゃいけない理由なんて何もない。

てか、悠里ユーリ安和アンナ椿つばきがそんなことしてたらそれこそお説教ものだよ。親を責める資格があるのは、子供だけだから。私だって、自分の子供にしたことが不適切だったんなら子供本人から責められて仕方ないと思ってるけど、何の関係もないただの野次馬に何か言われたって聞く耳持たないからね?

とにかく、これまでも言ってきたけど、正義を振りかざして誰かを罵倒するようなのは、礼儀礼節に反してるから。

その上で、他人から見れば<いい人>のようにも見える人が、必ずしも<いい親>とは限らないってこともわきまえないといけない。

低姿勢で誠実なように見える人が本当に<いい人>なのかは、それは分からないんだよ。ただし、分からないから面と向かって責めたりはしない。私はその人のことを知らないからね。

でもさ、先に遜って<予防線>を張って、『自分が被害者に見えるように振る舞う』人って、確かにいるんだよ。周りから同情を引こうとするタイプっていうのがさ。そういうの、子供からはどんな風に見えるんだろうね?

私は、自分が実際に悠里や安和や椿を育ててる親である以上、みんながどんなのに育つかは親に責任があるという実感しかないし、それを、自分を甘やかしたい人間に批判されたところで曲げなきゃいけない理由もない。

何よりこれは、親である私自身への<戒め>だしね。

あと、すぐ、『親の教育云々』って言葉を使うのもいるけど、大事なのは<教育>じゃないんだよねえ。口先だけでいくら美辞麗句並べたって、それがみんなに伝わった実感はない。<他人には見せない親の振る舞い>が伴ってなけりゃね。教育だけでなんとかなるんなら、学校の道徳の授業だけで済んじゃうじゃん。

大事なのは、<親自身の振る舞い>なんだよ。それも、<他人には見せない部分>のさ。

他人に見せてる部分をいくら取り繕ったって、そうじゃない部分でまったく逆のことをしてたら子供はしっかりとそれを見てるし、学び取っちゃうんだよ。

そして何より、<他人が見てないところでは自分の責任と向き合うことなく他人の所為にばかりしてる姿勢>を見せてたら、子供も、自分のやらかしたことを他人の所為にするのになっちゃうだろうね』



そうだね。親を責める権利があるのは、その親に育てられた子ども自身だと、僕も思う。

吸血鬼の僕と人間のアオの間に生まれることを強いたんだから、悠里達には何を言われても仕方ないんだ。

一緒にその覚悟をしてくれる女性だから、僕はアオを愛せたんだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

同窓会に行ったら、知らない人がとなりに座っていました

菱沼あゆ
キャラ文芸
「同窓会っていうか、クラス会なのに、知らない人が隣にいる……」  クラス会に参加しためぐるは、隣に座ったイケメンにまったく覚えがなく、動揺していた。  だが、みんなは彼と楽しそうに話している。  いや、この人、誰なんですか――っ!?  スランプ中の天才棋士VS元天才パティシエール。 「へえー、同窓会で再会したのがはじまりなの?」 「いや、そこで、初めて出会ったんですよ」 「同窓会なのに……?」

陽香は三人の兄と幸せに暮らしています

志月さら
キャラ文芸
血の繋がらない兄妹×おもらし×ちょっとご飯ものなホームドラマ 藤本陽香(ふじもと はるか)は高校生になったばかりの女の子。 三人の兄と一緒に暮らしている。 一番上の兄、泉(いずみ)は温厚な性格で料理上手。いつも優しい。 二番目の兄、昴(すばる)は寡黙で生真面目だけど実は一番妹に甘い。 三番目の兄、明(あきら)とは同い年で一番の仲良し。 三人兄弟と、とあるコンプレックスを抱えた妹の、少しだけ歪だけれど心温まる家族のお話。 ※この作品はカクヨムにも掲載しています。

神竜に丸呑みされたオッサン、生きるために竜肉食べてたらリザードマンになってた

空松蓮司
ファンタジー
A級パーティに荷物持ちとして参加していたオッサン、ダンザはある日パーティのリーダーであるザイロスに囮にされ、神竜に丸呑みされる。 神竜の中は食料も水も何もない。あるのは薄ピンク色の壁……神竜の肉壁だけだ。だからダンザは肉壁から剝ぎ取った神竜の肉で腹を満たし、剥ぎ取る際に噴き出してきた神竜の血で喉を潤した。そうやって神竜の中で過ごすこと189日……彼の体はリザードマンになっていた。 しかもどうやらただのリザードマンではないらしく、その鱗は神竜の鱗、その血液は神竜の血液、その眼は神竜の眼と同等のモノになっていた。ダンザは異形の体に戸惑いつつも、幼き頃から欲していた『強さ』を手に入れたことを喜び、それを正しく使おうと誓った。 さぁ始めよう。ずっと憧れていた英雄譚を。 ……主人公はリザードマンだけどね。

三年で人ができること

桃青
ライト文芸
もし三年後に死ぬとしたら。占いで自分にもう三年しか生きられないと告げられた男は、死を感じながら、平凡な日常を行き尽くそうとする。壮大でもなく、特別でもなく、ささやかに生きることを、残された時間で模索する、ささやかな話です。

虎の帝は華の妃を希う

響 蒼華
キャラ文芸
―その華は、虎の帝の為にこそ かつて、力ある獣であった虎とそれに寄り添う天女が開いたとされる国・辿華。 当代の皇帝は、継母である皇太后に全てを任せて怠惰を貪る愚鈍な皇帝であると言われている。 その国にて暮らす華眞は、両親を亡くして以来、叔父達のもとで周囲が同情する程こき使われていた。 しかし、当人は全く堪えておらず、かつて生き別れとなった可愛い妹・小虎と再会する事だけを望み暮らしていた。 ある日、華眞に後宮へ妃嬪として入る話が持ち上がる。 何やら挙動不審な叔父達の様子が気になりながらも受け入れた華眞だったが、入宮から十日を経て皇帝と対面することになる。 見るものの魂を蕩かすと評判の美貌の皇帝は、何故か華眞を見て突如涙を零して……。 変り行くものと、不変のもの。 それでも守りたいという想いが咲かせる奇跡の華は、虎の帝の為に。 イラスト:佐藤 亘 様

追憶の剣聖姫〜剣導部外伝〜

九重死処/shiori
キャラ文芸
脅威の戦跡を刻む神住の原点のお話 本編では語られない神住の秘密が明らかに――

視える宮廷女官 ―霊能力で後宮の事件を解決します!―

島崎 紗都子
キャラ文芸
父の手伝いで薬を売るかたわら 生まれ持った霊能力で占いをしながら日々の生活費を稼ぐ蓮花。ある日 突然襲ってきた賊に両親を殺され 自分も命を狙われそうになったところを 景安国の将軍 一颯に助けられ成り行きで後宮の女官に! 持ち前の明るさと霊能力で 後宮の事件を解決していくうちに 蓮花は母の秘密を知ることに――。

DWバース ―― ねじれた絆 ――

猫宮乾
キャラ文芸
 完璧な助手スキルを持つ僕(朝倉水城)は、待ち望んでいた運命の探偵(山縣正臣)と出会った。だが山縣は一言で評するとダメ探偵……いいや、ダメ人間としか言いようがなかった。なんでこの僕が、生活能力も推理能力もやる気も皆無の山縣なんかと組まなきゃならないのだと思ってしまう。けれど探偵機構の判定は絶対だから、僕の運命の探偵は、世界でただ一人、山縣だけだ。切ないが、今日も僕は頑張っていこう。そしてある日、僕は失っていた過去の記憶と向き合う事となる。※独自解釈・設定を含むDWバースです。DWバースは、端的に言うと探偵は助手がいないとダメというようなバース(世界観)のお話です。【序章完結まで1日数話更新予定、第一章からはその後や回想・事件です】

処理中です...