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第三幕

自分の提案したプロジェクトが上手くいかなかったりしたら、その原因を様々な方向から検証したりするんだよ。なのに、どうして<子育て>って

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『これもしつこく何度も言うけど、私は、自分が親になって確認したよ。『自分の子供に『生んでくれ』なんて一度だって言われてないし、相談も受けてない』ってさ。悠里ユーリ安和アンナ椿つばきも、そんな相談、私にしたことないでしょ? 

この事実がある以上、百パーセント間違いなく完璧に、『子供を生んだのは親の勝手』なんだよ。これは覆しようのない事実。いくら実証しようのないオカルトに頼っても無駄だよ。

てか、オカルトに頼ろうとするその姿勢がすでに<甘え>じゃん。『生んでくれなんて頼んでない!』って子供に言われたら、『はい、確かにそうです。ごめんなさい』としか言いようがないはずなんだよ。本来は。『子供は親の言うことに無条件に従わなきゃいけない』なんてのは、幻想なんだよ。

だって、子供を、本人の承諾なくこの世に送り出すなんていう勝手なことをしたのは親の側なんだから。

だから何度だって言うよ。『子供を養うのは親の側の<義務>であって、その義務を果たしただけで<育ててやった恩>なんか子供に売れると思ったら大間違いだ』ってね。『子供が言うことを聞いてくれない!』とか泣き言を並べる前に、自分の言ってることが果たして客観的にまっとうな合理性を持ってるかどうかを多角的に検証するってことをやったらどうなの?って思う。

仕事だったらそういうことをするんだしさ。自分の提案したプロジェクトが上手くいかなかったりしたら、その原因を様々な方向から検証したりするんだよ。

なのに、どうして<子育て>ってことになると途端にそれができなくなるんだろうね。

それが<甘え>じゃないなら、何だって言うんだろ。『親の言うことは絶対に正しい。親は間違ったことは言わない。だから親の言うことに従っていれば上手くいく』とか、本気で思ってんのかなあ。

もし、『親の言うことは絶対に正しい。親は間違ったことは言わない。だから親の言うことに従っていれば上手くいく』んだったら、世の<政治家>が、<専門家>が、<どっかの国際的な組織の偉い人>が言ってることも、いつだって正しくて間違ってないはずだよね。だってその人達の多くが、<親>だったりするじゃん。

じゃあなんで素直に従わないのかなあ。『従えない、従いたくない、とても上手くいくとは思えないようなことを言ってる』からじゃないのかな。それ以前に、『こいつの言うこととか従いたくない』って思うからじゃないのかな。『親だからって必ず正しいことを言ってるとは限らない』って、ちゃんと知ってるじゃん。

<親>の言うことに無条件に従ってれば必ず上手くいくわけじゃないって知ってるじゃん。

なにより、『子供をこの世に送り出したのは親の勝手。だから子供を養うのは親の側の<義務>であって、その義務を果たしただけで<育ててやった恩>なんか子供に売れると思ったら大間違い』っていう事実を認めたくないという<甘え>が親の側にある限り、子供に、『甘えるな!』とか言う資格はないと思うんだよね。

そしてその<甘え>を持った親の子が<甘ったれ>に育ったとしても、それは親の姿を見倣っただけでしかないんだろうね』



アオがそういう話をするたびに、悠里達からは様々な質問が投げ掛けられたりする。それに対してアオは、いつだって丁寧に答えてくれる。決して蔑ろにしない。

だから悠里達は、アオを信頼してくれているんだ。

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