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第三幕

もし万が一、『自分の好みに合わないのは潰してしまえ!!』なんてのが通れば、しかもそれが自分じゃなくて他の誰かがそれを通せるようになれば

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『つくづく、『全ての創作物が自分の好みに合わせて作られるべきだ』って考え、本当に創作にとっては害悪以外の何ものでもないと思う。『自分好みの作品がない』てのを、『じゃあ、自分で自分好みの作品を作ればいいじゃん!』っていう発想に切り替えられたら、その中から面白いものを作れる人が出てくる可能性はあるから、それはいいと思うんだ。

だけど、『自分の好みに合わないのは潰してしまえ!!』ってなると、創作の邪魔になるだけなんだよね。

もし万が一、『自分の好みに合わないのは潰してしまえ!!』なんてのが通れば、しかもそれが自分じゃなくて他の誰かがそれを通せるようになれば、自分の好みに合う作品が潰されることになる可能性だってあるんだよ?

何しろ、どんなに売れてる作品にだって、『こんなのが売れてるのはおかしい。ゴリ押しだ! 陰謀だ! だから潰してしまえ!!』みたいなこと言うのは必ず出てくるじゃん。そういう人が力を持って『自分の好みに合わないのは潰してしまえ!!』ってやったら、潰されちゃうんだよ? そんなのが本当に<健全>だと思う?

自分の好みに合わない作品だって当たり前みたいに作られる状況だからこそ、自分の好みに合う作品だって生まれてこれるんだ。それを理解しなくちゃ。

誰か一人の好みこそが絶対の価値ってワケじゃないんだよ。誰か一人の好みはあくまでその人だけのもの。『自分の好みこそが価値のあるものだ!!』って思いたいのかもしれないけど、そんなワケないじゃん。

<好み>なんてのは、人の数だけあるんだ。他人の好みに口出ししなくなってようやく、自分の好みにも口出しされなくなるんだよ。

他人の好みに口出しして貶してるうちは、自分の好みも他の誰かから口出しされて貶される。

その覚悟は当然のこととして必要なんじゃないのかな。

まあ、創作者の方にも、『自分の作品が売れないのは読者が分かってないからだ!!』的なことを言う人がいたりするけど、それについてはさ、『売れる』『売れない』って形で容赦なく結果が出るじゃん? すごく売れて天狗になったとしても、次回作では鳴かず飛ばずで打ちのめされるってこともよくあることじゃん?

それはそれでありなのかもしれない。

実際、私は『コンスタントに売れる』ってだけで、爆発的なヒットってのはないしさ。しっかり評価はされてるんだ。

でも、私は、自身の創作については、『読者のため』じゃなくて、『自分のため』にやってることだから、それでこれだけ売れてくれたら万々歳だよ。これ以上を望んだら罰が当たる気がする。

そういうのを、『向上心がない!』って言う人もいると思うけどさ。いろんなのがいるからいいんだと思うよ』



アオは、悠里ユーリ達が誰かを傷付けることがないように、そう諭すんだ。自身の価値観や考え方が唯一絶対のものだと考えなくても済むようにね。

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