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第三幕

復讐の是非についても関わることだろうけど、『やられたらやり返す』って考え方は、『無関係な誰かを絶対に巻き込まずに実行できる保証がない』という

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『なんて言うかさ、『やられたらやり返すのは当然』『暴力で問題解決』『言いたいことを言えないのはおかしい』私以外にも、この考え方ばっかりがもてはやされる危険性について触れてきた人は何人もいると思うんだけど、まったく耳を貸さないどころか嘲ってたりしてる人がいるんだよね。

私は、自分の作品の中で触れてきただけだから、『たかがフィクション』ってことで見過ごされてきたんだろうけど、実際に現実社会で訴えてきた人もいたはずなんだ。

なのに、それを真剣に受け止めようとしなかった。

今みたいに、<言葉の暴力>で自分達に都合のいい世界に作り替えようとする人達が力を持たないようにと願ってきただろうにな……

まあでも、それでも私は自分にできることをするだけだよ。言葉の暴力で世の中を変えてしまおうとするような人に悠里ユーリ安和アンナ椿つばきをしてしまわないように努力するだけだ。

でさ、復讐の是非についても関わることだろうけど、『やられたらやり返す』って考え方は、『無関係な誰かを絶対に巻き込まずに実行できる保証がない』という時点で、暴走運転と同じだと思う。

無茶苦茶な運転してる人だって、飲酒運転をしてる人だって、それこそ、自動車を安全に運転できる能力を失ってる人だって、『自分は事故は起こさない』って考えてそうしてるんじゃないの? だけど現実には事故は起こってる。咄嗟の時に対処できないような運転の仕方とか、咄嗟の時に適切な操作ができない状態なのに自動車を運転してる人がいて、実際に事故を起こしてる。

普段は安全運転してて、ちゃんと健全な運転ができる人でも、事故は起こることがある。なのに、その上で、<安全じゃない運転>をしてたことで事故を起こして、それで巻き込まれた人はどうなるの? 納得できないでしょ? 現にそういう事故は起こってて、被害者も実際に出てるじゃん。『やられたらやり返す』で事を起こして、それでまったく無関係な人に被害が及んだら、どう責任取るつもりなんだろうね。どうしてその危険性を考えないんだろうね。

そんな形で他人に迷惑掛けてもいいって、誰が教えたんだろうね。



親はさ、自分の子供にそういうことを教えるのが役目だと私は思ってる。

私自身はどうしようもないダメ人間で、<ロクでもないクソ>かもしれないけど、だからって悠里や安和や椿を自分と同じにしていいってわけじゃないんだよ。『自分は親から教えてもらってないから、自分もそんなこと考えなくていい』ってわけじゃないんだよ。『他人もやってないから自分もやらなくていい』ってわけじゃないんだよ。

それって、『他人の所為にしてる』ってことだからね。



お説教されるのって、いい気分じゃないよね。

だからさ、私は、ニュースとか見た時に、普段の何気ない会話として、みんなとこういう話をするんだよ。

そして作品の中でも触れるんだ。

私にはそれしかできないから』



アオの言うとおり、人間は、自分に都合の悪いことは決して起こらず、自分に都合のいいことは必ず成功すると考えがちな生き物だ。

彼女は、その点を冷静に捉えられるから、僕は彼女を信頼できるんだ。

『自分は完璧じゃない』ことをわきまえているからね。

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