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第三幕

『育児より仕事の方が大変だ!』とか言っちゃうのって、自分の親を、特に母親を貶めてるのと同じだからね?

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『結局さ、『わざと他人を傷付けたり苦しめたりしようとせず、自分の身近な誰かを幸せにできる人』とか、正直、今の世の中じゃ、完全に実行できる人なんて、むしろ少数派だよね。たぶん。

だってそうじゃん? 日がな一日ネットに張り付いて、歩きスマホしながらまで他人に罵詈雑言ぶつけてるようなのがどれほどいるか。

それを思ったら、やっぱ『わざと他人を傷付けたり苦しめたりしようとせず、自分の身近な誰かを幸せにできる』ってのはもう<才能>だよ。

私は、悠里ユーリ安和アンナ椿つばきにそれができるようになって欲しいから、自分で手本を示すようにしなきゃって思うんだ。

<批判>と<罵詈雑言>の区別も付けられるように、ちゃんとね。

でも同時に、『こんなこと言っててもついつい』っていうのもあるから、『どれほど高い志を掲げてても人間は完璧にはなれない』って現実も学んでもらうことになる。

それは、『完璧になれない自分を卑下しすぎない』ようにするためと、なにより、『他人に完璧を求めないようにする』ためなんだ。

いるでしょ? 他人に完璧を求めて、自分の思ってるようにしてくれないからってキレる人。

私は人間を育ててる親として、そんな理由で他人を攻撃する人を作りたくないんだよ。

悠里や安和や椿を、他人を攻撃しないで済む人に育てられたら、それだけ嫌な思いをする人を減らせるじゃん?

つまるところ、『世の中を変えていく』ってのは、そういうことなんだと思う。他人を傷付けよう苦しめようと安易に考えるような人間を生み出さないようにってことなんだと思うんだよ。

私はその想いを、作品に込めてるんだ。

まあ、だいたい、『メンドクサイ』とか『説教臭い』とか言われて敬遠されるけどさ。『上から目線がムカつく』とかも定番の意見だね。

だけど、千人中の九九九人が理解してくれなくても、たった一人にでも伝わればそれでいいんだよ。

だってほら、そうすれば、悠里や安和や椿にプラスしてその一人に伝わるわけで。

三人だけに伝わるところだったのが四人になる。

それだけでもすごいことだよ。

人間を育てるってのは大変なことなんだってつくづく実感する。

よく、『仕事と育児とどっちが大変か?』なんてことを言ってる人がいるけど、私はそんなことを比べようっていう発想がもうおかしいと思うんだ。

だって、『育児より仕事の方が大変だ!』とか言っちゃうのって、自分の親を、特に母親を貶めてるのと同じだからね?

だからそういうことを言ってる人を見ると、『ああ、この人の母親は自分の子供に尊敬されてないんだな』って思う。

自分の親を尊敬してたら、『仕事と育児とどっちが大変か?』なんて発想自体が出てこないと思うんだけど?

両親を敬ってたら、<育児をしてる方><外で仕事をしてる方>のどっちが大変か?偉いか?みたいな優劣をつけようとか考えもしないと思うんだけど?

それに、『大変な方こそが偉い!』みたいな考え方って、ただの、<不幸自慢>としか思えないしさ』

そうだね。育児と仕事で優劣をつけようという発想がそもそも的外れだというのは、僕も感じてる。単純な収入は僕の方が多くても、アオの存在は、金銭には換算できないからね。

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